山形県の医師確保対策
山形県は人口10万人あたりの医師平均数が217人(2015年末時点)と、全国平均を下回っているのが現状です。2016年にかけては、山口県と並んで医師数が減少に転じており、増加率が全国ワースト1位になってしまいました。需要は2025年にピークを迎えると予測されていますが、医師数などのデータからは、医師の確保に苦労していることが伺えます。
ただし、山形県は医師確保のために多様な取り組みを行っているのも特徴です。特に今後の医療を担う医学部生に対してはサポートが手厚く、行政が全面バックアップしてくれます。他の都道府県に比べても充実しており、将来に向けたフォロー体制も整っている強みがあります。柱となる取り組みは主に2つですが、いずれも山形県の医師確保に対する姿勢が見て取れます。
特定診療科に勤務希望する医学部生の奨学金返還免除
山形県では、特定の診療科へ勤務を希望する医学部生に対し奨学金を支給しています。金額は年間200万円で年間5名程度を目標にしており、一定条件を満たせば奨学金の返還が免除されます。ただ、条件はかなりシンプルで、一般的な奨学金よりも利用のハードルを下げています。
・山形県内の公的医療機関で勤務を希望すること
・小児科・産婦人科・放射線科・麻酔科のいずれかに勤めること
・貸出期間の1.5倍の間働くこと(7年未満の場合は7年間とする)
これらの条件を満たした場合、奨学金を返還する必要がありません。同様の奨学金は、他にもいくつかの県で導入されていますが、特定診療科の条件が豊富なのは山形県と兵庫県のみです。そのため、他県に比べて利用しやすい条件が整っているといえるでしょう。都道府県が独自に奨学金を導入するケースが珍しいですが、山形県はこうした手厚い奨学金により、将来の医師確保に努めています。
山形大学医学部と連携した「医師生涯サポートプログラム」
医師は将来に向けたライフプランニングが大切ですが、山形県は県がそれを後押しする取り組みを実施しています。「医師生涯サポートプログラム」と呼ばれる事業で、2010年に山形大学医学部との連携が決まりました。これはステージに合わせた医師のキャリアアップを総合的に支援するプログラムです。山形大学の医学部へ入学した方を対象に、奨学金や修学資金などの資金面をバックアップし、更に卒業後は独自の研修システムも用意されています。
医師向けの取り組みは、大学の資金支援のみで終わるのが通例です。しかし、山形県の場合は異なっており、専門医までの一貫した教育プログラムが用意されていたり、地域医療推進講座へ参加できるなど、一生涯に渡って支援してくれるのです。
医師生涯サポートプログラムは独自性が高く、画期的な事業といっても過言ではありません。医学部と連携するケースは珍しくないですが、生涯に渡り支援を受けられるのは滅多に無いでしょう。なお、山形県はドクターバンク事業も取り組んでいます。様々な取り組みによって医師を支援していますので、制度の充実度合いは全国でもトップクラスといえます。
引用:https://manabi.benesse.ne.jp/daigaku/school/1085/index.html