青森深浦町は破格条件でも医師の採用ができず、深刻な医師不足
東北の最北端に位置する青森県は、10万人あたりの医師数が198人と、全国平均を大幅に下回っているのが実情です。中でも医師不足が深刻になっている自治体が深浦町で、破格の条件を提示しても応募が集まらず、地方の医療事情を如実に表している例といえます。
なお、深浦町が提示した条件は年収2,200万円で、これは一般的な医師の年収に比べて約1.5倍の額です。他にも住宅の無償提供・学会参加費や光熱費を町が負担など、まさに破格ともいえる条件です。しかし、この条件で過去に3年間募集を行いましたが、結局1人も採用がなく、断念した経緯もあります。
なぜ高い年収を提示しても医師が集まらないのでしょうか?その理由はいくつか挙げられます。
- 町が縦に長いうえ移動や生活が不便
- 僅かな人数で24時間体制の在宅医療に従事する必要がある
- 現在の医師は収入よりもライフスタイルを重視する傾向にある
他にも考えられますが、こうした事情が医師の応募を阻んでいるといえます。特に現在は収入よりQOLを重視する医師が多く、働き方そのものが変わっていることも背景にあります。深浦町にとっては、医師の生活利便性確保が急務といっても良いでしょう。ただし、これは深浦町に限らず、その他の地方自治体でも同じです。QOLを重視する医師には、生活利便性が1つのファクターになっています。そのため、利便性の低い地域には医師が集まりにくいのが実情です。
引用:http://fukadoko.jp/spot-4-16/index.html
青森県の医師確保対策
しかし、青森県も様々な施策で医師の確保に努めています。特にへき地での医師不足を解消するために、学部実習や臨床研修を奨励したり、あおもり地域医療・医師支援機構(現「青森県地域医療支援センター」)を設置するなどの策を行っています。斬新でかつ目新しい取り組みといえますが、青森県のへき地医療の格差をなくすための姿勢が伺えます。
県内僻地の診療所で学部実習・臨床研修を奨励
青森県は、へき地にある診療所で医学部の実習や臨床研修に力を入れています。へき地医療を含めた研修・実習のメッカにすることを目的としており、かなり珍しい取り組みです。全国に先駆けた斬新な手法ともいえるでしょう。更にはへき地の現状を知ってもらうとともに、魅力・やりがいを感じてもらう良いきっかけにもなると考えられます。
過去には青森県が直接実習生の募集も行っていましたが、他にもへき地が存在しない大阪市立大の医学生が参加するなど、いくつかの実績があります。更には海外の医療機関と臨床研究部門で連携を模索するなど、青森県の積極的な姿勢が伺えます。このような検討事項もあることから、一定の効果が出ていると考えられるでしょう。
へき地に対してネガティブな印象を持つ方も少なくないのが実情です。しかし、この取り組みによってそうした印象も薄れることも期待されます。1人でも多くの医師がへき地の医療へ興味を持てば、今後の地域医療のあり方そのものが変わることもあるでしょう。その可能性も十分に秘められた施策といえます。
「あおもり地域医療・医師支援機構」の設置
青森県が地域医療を支えるため設置したのが、あおもり地域医療・医師支援機構です。先述の通り、現在は青森県地域医療支援センターへ改組されています。この事業では、青森県での勤務を希望する医師に対して、自治体の医療機関の紹介や斡旋を行っています。また、勤務や異動調整などの支援も提供しており、医師が安心して働いてもらえるよう環境整備に努めているのも特徴です。利用も無料のため、まさに医療版ハローワークといっても良いでしょう。
医師へ医療機関を紹介する以外にも、キャリア形成の支援も実施しています。具体的には研修医・指導医を対象にしたセミナーやワークショップ、センター登録医師制度の奨励などです。こうした取り組みを通じて、医師のキャリアプラン実現を県が全面バックアップしてくれるのは大きな魅力となります。
実は全国の地方自治体で初となる取り組みです。今までありそうでなかったのも驚きですが、ここまで手厚い支援を受けられるのも珍しい事例といえるでしょう。