地方自治体・地方公共団体の違いとは

地方は離島や山間部などのへき地を多数抱えている反面、医師が不足しているケースも見られます。都市部の医療体制とへき地の医療体制の間には隔たりが生じており、同水準の医療を受けられない地域も少なくはありません。この溝を埋めるため、地方では医師を積極的に募集しています。しかし、インターネット上で求人などを見てみると、「地方自治体」と表現されている場合がありますが、一方で「地方公共団体」といった表記が用いられていることもあります。

実は法律上「地方自治体」という名称は存在しません。法律上正しい呼び方は「地方公共団体」で、これは地方自治法の第1条で規定されています。ただ、ネット上の情報などでは、これらの表現が統一されていません。求人を探す際に戸惑う可能性もありますが、基本的な意味は同じです。地方公共団体=地方自治体と捉えても問題はないでしょう。

地方公共団体の法律上区分

地方公共団体は大きく分けると2種類に区分されます。

  • 普通地方公共団体
  • 特別地方公共団体

主にこの2種類が地方自治の根幹を担っており、地域の公共インフラや医療、各種行政サービスを提供しています。ただし、これらの地方公共団体は更に細分化されています。

普通地方公共団体

  • 都道府県
  • 市町村

特別地方公共団体

  • 特別区(東京都の23区)
  • 財産区
  • 地方公共団体の組合

地方自治体と聞いて、私達が真っ先に浮かべるのが普通地方公共団体でしょう。普通地方公共団体は都道府県・市町村単位で区分されています。ただし、東京都にある23区は特別地方公共団体です。

一方の特別地方公共団体は、特別区の他にも財産区・地方公共団体の組合という区分が存在します。いずれも馴染みの薄い団体といえますが、地方行政の根幹に深く関わっています。

市町村の合併が行われた際、本来なら旧市町村が保有する財産(土地など)は新自治体へ継承されます。しかし、これを継承せず、旧市町村単位で管理・売却を行うための組織が財産区です。地方自治法の第294条で規定されています。

もう一つの地方公共団体の組合は、隣接する複数の自治体と行政サービスの一部を共同運営するための組織です。例えば水道事業や福祉、学校や消防など、単独では維持が困難な行政サービスを提供する際に設置されます。

医療との関わりについて

では、地方公共団体と医療機関にどのような繋がりがあるのでしょうか?その繋がりとは、病院の運営主体にあります。一口に病院と言っても、地方公共団体が運営する病院(自治体病院・公立病院)と、個人や医療法人が運営する民間病院の2種類が存在します。自治体病院は、厚生労働大臣が認可した公共団体が運営を行う病院で、県立や市立病院などが当てはまります。皆さんがお住いの地域にも、自治体病院が1つか2つはあるのではないでしょうか。

自治体病院は全国に数千施設あります。主に地域の基幹病院として位置付けられており、民間の大学病院のように、多様な診療科を備えてあるのが一般的です。例えば内科や外科のように、基本となる診療科のほか、麻酔科や放射線科など更に細分化されている場合もあります。

自治体病院の多くは地方公共団体が運営しており、基本的に医療法人は設立されません。各地方公共団体が条例に基づいて管理運営を実施しており、病院の管理・最高責任者は市町村などの首長が兼ねているケースが大半を占めます。民間病院は医療法人の経営部門が予算の編成・執行を行いますが、自治体病院は議会が権限を持っています。このため、病院の予算を編成するには議会承認を得なくてはいけません。

自治体病院で働く医師や看護師などのスタッフは全員が地方公務員です。このため、採用や給与支払・昇進などの基準は地方公務員とほぼ同じになっています。指定管理者制度により運営されている場合や、一部の独立行政法人は除きますが、地方公務員法の適用対象者となる点が民間病院との大きな違いといえます。

自治体病院へ転職するメリットについて

自治体病院は地域の包括的な医療を担っており、山間部などのへき地では欠かせない存在となっています。そのため、へき地医療に興味がある方が転職する際の第一候補となります。また、民間病院にはない強みやメリットを持っています。

  • 様々な疾病の臨床へ立ち会える(実績を積める)
  • やりがいが大きく昇進しやすい(ポストを得やすい)
  • 民間病院と比較して給与・待遇が良い

主な利点はこの3つでしょう。自治体病院は診療科が多い上、地域の基幹医療を担っています。地域によっては外来・入院患者が非常に多いことから、様々な臨床に立ち会えます。将来のため臨床経験や実績を積みたいなら、自治体病院が転職先の候補に入るでしょう。

また、昇進も強みです。民間病院の場合、医師の人事は医局に左右されるパターンが少なくありません。ポストを得るには医局に所属するか、相応の実績を積まないと難しいのが実情でしょう。しかし、自治体病院には医局の関与や影響がほとんど無く、公募などを通じて積極的に医師を募集しています。ある程度の経験があれば昇進しやすく、更にやりがいのある役職へ就けることも珍しくないのです。民間病院よりコンスタントに昇進できる可能性もあるため、キャリアアップを目指すなら最適な選択肢となります。

そして給与や待遇の良さも魅力といえるでしょう。自治体病院の医師は地方公務員であり、安定した給与と賞与が保証されています。年収の相場は1,500万円前後ですが、へき地の場合は勤務地などが不利なため、更に厚遇される可能性もあります。勤務時間などの待遇面も良く、診療科によってはQOLのバランスを取りやすいのも特徴です。

自治体病院が抱える問題点について

やりがいやポスト、給与面などで優遇されている自治体病院ですが、その一方で根深い経営問題も抱えています。特に地方公共団体は、各地域ごとに医師の在籍数に大きな隔たりがあります。都市部では人材が集まりやすく、更に税収も多いので経営を続けやすい特徴を持ちます。当然ながら医師の雇用環境も安定しています。

しかし、人口減少が目立つ過疎地などは違います。高齢化と人口流出による税収不足で悩まされており、財政難から自治体病院の運営が困難な状況におちいっているのです。更に病院の統廃合・再編も進んでおり、診療所へ格下げされるようなケースも相次いでいます。特にへき地は顕著で、医療機関の存続自体危ぶまれるケースもあります。

医師不足で悩むところ地方公共団体は少なくないですが、そのほとんどは経営状況が悪化しています。なお、民間病院とは役割や予算権限などが違うため、赤字経営とは切り離して考えなくてはいけません。自治体病院の年収は高水準ですが、病院が統廃合されるリスクや、格下げされるケースもあることには留意するべきです。転職後に配置換えや、再雇用が生じる可能性も捨てきれません。

地方の医療は格差がある

安定性なら民間病院も候補に入りますが、やりがいや年収を求めるなら自治体病院が候補に入るでしょう。しかし、地方の医療事情は良いと断言できないのが実情です。地方間でも医療格差があるため、転職においても考慮すべきファクターとなるでしょう。現に人口や税収減による再編も起こっていますので、各地域の医療事情を把握してから転職すべきです。