高齢化と医師不足に悩む国「日本」

現在の日本は人口の減少と高齢化が進んでいます。医療は技術革新などが進んだおかげで平均寿命は年々伸びていますが、そこに潜在する問題が医師不足です。高齢者を支えるためには病院が必要ですし、何よりも医師の存在が欠かせません。しかし、地域によっては医師が足りておらず、医療サービスに影響が出ているケースもあるのです。しかし、どうして医師が不足しているのでしょうか。

日本の医師不足の原因は主に5つの側面からなると言われる

医師不足の要因は5つ挙げられます。

医師の絶対数の不足

医師に対してのニーズは年々高まりつつありますが、現状ではそれを満たせるだけの供給がないと考えられています。このため、全国的に見て医師の””取り合い””の様相を呈しており、後述する偏在にも繋がっているのです。

原因が特定の診療科における医師の不足と偏り

病院の診療科は様々ありますが、医師に人気の科目もあれば、リスクの大きさなどから不人気の科目も存在します。例えば、内科や眼科、皮膚科などは比較的人気が高く、男女それぞれ一定数の医師がいます。しかし、心療内科や小児外科などは医師数が少なく、不足気味の傾向が見られるのです。特定診療科では、こうした偏りの影響を受け、医師の確保が課題となっています。

特定の地域における医師の偏りとそれに伴う不足

地域間の医療格差が生じている最大要因でもあります。交通利便性が良く、人口密度が高い大都市や都市部では、医療機関が集積しており、医師を確保できている地域も少なくありません。一方、へき地を抱える地方では、こうした都市部へ医師がストローされ、医師の確保が急務となっている地域もあります。人口や医療機関の違いもありますが、都市の生活環境の良さも拍車をかけているでしょう。

病院勤務医の不足

クリニックなどの小さい診療所は、必要な医師数が少なくて済み、確保も難しくないのが実情です。しかし、病院は比較的規模が大きく、地域医療の根幹を担っているところもあります。このため必要な医師が多数求められるものの、その確保に苦労しているのです。医師不足を理由に緊急搬送の受け入れを断るなど、病院勤務医の影響がが深刻化している地域も存在します。

特定時間帯における医師不足です。

現在は医師の働き方も多様化していますが、QOLを重視するため外来のみの診療科を希望するケースや、非常勤を希望する方もいます。今では産業医など、医療機関以外の転職先もあります。このような背景により、特に夜間勤務や救急対応できる医師が不足しており、地域医療にも少なからず影響を及ぼしているのです。先述の通り、緊急搬送の受け入れ拒否にも繋がっています。

日本の医師数は年々増加傾向にある

医師不足が叫ばれて久しい昨今ですが、実は日本全体を見渡すと、医師の数が年々増加傾向にあります。医療機関が医師の確保で悩んでいる現状とは相反する結果ですが、医師の総数自体は増えているのです。年々数千人単位で増えているとも言われていますが、ならどうして医師が不足する状況におちいっているのでしょうか?

考えられるのが、需要と供給のバランスが取れていない点です。医療サービスに関する需要は非常に高い一方、それを満たすだけの医師の供給数が無いのです。ただし、医師を取り巻く労働環境を考えると、需要を満たせないのは仕方ない側面もあります。医師は年収が高いとは言っても、仕事内容がそれに見合っているとは限りません。医療では診療報酬を基に給与ベースを決める側面もありますが、その診療報酬が低いのです。

一般職と比べたら高い医師の年収ですが、それが実情に合っているとは言えません。このため、医師の人数自体は多いものの、医師が現在の労働環境に満足せず、避けている可能性も十分あり得るでしょう。

そう考えると、医師の””絶対数不足””という論点は少しずれているようにも見えます。的外れともいえるでしょう。医師の不足と絶対数の不足は分けて考える必要があるといえます。確かに地方などでは医師が不足しているのが実情ですが、全体の数そのものは増えているため、需給バランスの問題に帰結します。

医師不足対策について

では、医師不足甲斐性のために何が必要か考えてみましょう。現在厚生労働省が推進しているものを始め、対策はいくつか考えられます。

  • 医学部の増員
  • 医師の待遇改善(特に女性医師)
  • 海外招致
  • 法律や条例による需給の規制
  • 一部業務を看護師らが担えるよう制度改革

厚生労働省が推進しているのは、1つ目の医学部増員です。しかし、増員しても全員が医師免許を取得できるとは限らず、更に時間を要するのが問題です。最も現実的な庵は、2つ目の待遇改善といえるでしょう。特に女性医師は育児などのため退職する方が多いですが、現場復帰のための支援や環境整備が求められます。女性医師の活躍できる場が増えれば、医師不足も考えられますが、医療現場の現状を考えると難しいのが実情です。

一方で海外から医師を承知する案も考えられます。しかし、日本の医師免許と海外のそれとでは基準が異なります。更に医師免許取得のためには、日本語の語学力なども求められます。こうした現状もあるためか、海外からの招致は進んでいません。

条例による規制や制度改革することも提案されています。条例は自治体単位で制定できますが、地域医療の疲弊に繋がるとの指摘も出ており、あまり現実的ではありません。制度改革も考えられますが、必要な技術の取得に時間を要すること、リスク増大により医療従事希望者の減少に繋がることが懸念されます。

将来的に医師不足は解消され、余剰に転じるといった推計あり

現在の日本は医師不足で悩んでおり、様々な対策が考えられています。しかし、長い目で見ると医師不足は解消され、逆に過剰へと転じるとの推計も出ているのです。その転換期が2028年と言われており、その頃には医師が35万人に達し、必要数が満たされると考えられています。

今後の日本は人口が減少することから、全体の需要は2030年頃に減少が見込まれています。合わせて病床数の削減も検討されており、病院の統廃合も進んでいくでしょう。転職を念頭に置いた場合、現在の医師は売り手市場といえますが、2028年頃を境に買い手市場へと転じる可能性もあります。