島根県が行う医師確保対策の「3つの柱」

島根県全体の医師数は全国平均を大きく上回っており、年々増加傾向にあるのが特徴です。特に出雲地区は、人口10万人あたりの医師数が426人(2016年度)と非常に多く、これは全国平均の1.8倍以上になります。その一方で地域間格差は非常に大きく、例えば雲南地区は142人と、出雲地区の3分の1にすら届いていないところもあります。このため、島根県は医師の偏在化を緩和し不足を解消するため様々な取り組みを行っています。

地域医療は多方面から色んな策を講じなくてはいけませんが、島根県が実施している医師確保策は3つの柱から成り立っています。鍵となるキーワードは「呼ぶ」・「育てる」・「助ける」の3つで、それぞれに応じた幅広い医療関連事業を展開しています。どの柱も地域医療と密接に繋がっており、特に過疎地やへき地の医師不足解消に重点が置かれています。

①現役の医師の確保

まず「呼ぶ」のキーワードに当てはまる柱が、現役医師の確保です。島根県では、いくつかの事業によって現役医師の確保に努めています。主な確保策は下記の3つです。

  • 医療関連の職業紹介事業(通称「赤ひげバンク」)
  • 研修支援制度(地域で勤務する医師の確保策)
  • 研修課程の医師の誘致事業

特に目を引く確保策が赤ひげバンクでしょう。これは県内の地域医療に興味がある医師など医療関連職や、医学生を対象にした事業です。赤ひげバンクへ登録すると、年に数回島根県の医療広報誌が送られてくるほか、研修やセミナー、地域病院などの情報を受け取ることが可能です。

また、島根県で働くことを希望する医師に対して、希望条件に沿った病院・診療所の紹介や斡旋を行っています。ホームページにも求人が掲載されており、年俸や勤務時間、病床数(病院の規模)などの確認もできます。特に情報発信が積極的で、実際に島根県で働いている医師の声も掲載しています。こうした取り組みによって、即戦力となる医師の確保に努めているのが特徴的です。

引用:https://www.medi-gate.jp/selection/contribution15/

②地域医療を担う医師の養成

2つめの柱が「医師の養成」です。キーワードでは「育てる」に該当します。島根県は、将来の地域医療を担う医師の育成にも力を入れており、特に2つの取組みに重点が置かれています。

・奨学金など各種支援資金の拡充
・医師を育成するとともに県内定着策の推進

奨学金などが充実しており、中でも医学部生を対象にした「医学生地域医療奨学金」が特徴です。これは将来島根県で働く意志を持つ医学生に対して、県が毎月一定額の修学費を貸与してくれる制度です。貸与期間は大学の課程が終わる月までですが、卒後は県が指定する病院などで貸与期間と同等の期間勤務すると返済免除になります。

特に地域枠が豊富です。「地域枠推薦」や「緊急医師確保対策枠推薦」など、合計で5種類の枠が設けられており、他にも県外の大学医学部も対象になっています。ただし貸与条件は各枠によって若干異なっており、奨学金の貸与が出願条件の枠もあります。ただ、募集定員は比較的多いため、医学生が申し込みやすくしている点が評価できます。

③地域で勤務する医師の支援

そして3つめとなる柱が「医師の支援」で、「助ける」のキーワードが該当します。現在島根県内で働く医師を支援することに重点を置いており、主に3つの取り組みが実施されています。

  • 代診医師の派遣
  • 離島やへき地における医師の派遣や支援
  • 医師が勤務する環境の改善支援

島根県は、離島や山間部を中心に無医地区(半径4キロ以内に医療機関が存在しない地区)を抱えており、医師の定着や安定確保が課題となっています。また、現在へき地などで働いている医師の労働環境も問題になっており、休暇や技術・経験を磨く機会の確保も求められています。

このような現状を改善するために、代診医師の派遣制度やへき地で勤務する医師の支援に乗り出しています。休暇などを確保するため、各医療機関の労働環境改善にも力を入れています。この柱は、医師の環境を改善することで定着率を高め、無医地区の解消が目的となっています。他の2つの柱と合わせることで、医師の偏在化緩和も期待できるでしょう。