へき地を避ける医師は多いが将来に繋がる可能性がある

日本は離島や山間部など多数のへき地がありますが、これらの地域は医師不足で悩んでいるのが現状です。交通網が発達しておらず、生活が不便な地域も少なくはありません。このような理由から、へき地を避ける医師も多いのです。しかし、あえてへき地に転職することは、自身の将来に良い影響をもたらす可能性もあります。

へき地の病院では総合診療を学ぶことができるのがメリット

少子高齢社会を迎えている日本では、今後複数の疾病を抱える高齢者が増えると考えられており、医師に求められる知識も時代に合わせて変化しています。これまでは特定疾病に強ければ十分通用していましたが、これからは幅広い疾病に対する知識や、総合的な診察力が欠かせないのです。いわゆる総合診療へのニーズが年々高まっており、対応できる医師が医療現場で重宝されています。

へき地は医療機関そのものが少なく、小さな診療所で様々な疾病を抱える患者と向き合うことになります。都市部の大規模病院なら、症状に合わせて多数の診療科が設けられていますが、へき地にはそのような医療機関がほとんど無いのです。そのため、多数の患者と診察を通じて総合診療を学べることがへき地に転職する最大のメリットとなります。

これからの時代、総合診療医は欠かせなくなると考えられますが、へき地でスキルを磨いておけば、将来のキャリアアップへと繋がります。また、開業医を目指している場合でも、へき地で得た知識と経験は無駄にならないでしょう。患者との距離も近いため、コミュニケーション力も高められます。このように、へき地の医療機関に転職することで将来の選択肢も増えるのです。

常に必要医師数が足りていない

全国にあるへき地の医療事情は深刻で、必要な医師数を確保できていない地域ばかりです。医師数が全国平均を上回る都道府県でも、都市部に医師が集中しており、それが全体の数値を引き上げているのが実情なのです。離島などへき地は全国平均を下回る地域が多数を占めており、都市部との間に大きなかい離が見られます。

へき地で医師が不足している理由は先述の通りですが、現在は各都道府県がへき地の医療環境改善に乗り出しています。医師を確保するために助成金などの手厚い支援を行っているほか、ドクターバンクで医療機関の紹介・斡旋を実施しているケースもあります。逆に考えると、これらの支援策を活用すれば、有利な条件でへき地に転職できるでしょう。

将来も医師の偏在の課題は残る可能性が高い

医師の需要は2025年にピークを迎え、その後落ち着くとの推計も存在します。しかし、統計上の数値と実情はかけ離れている点に注意が必要です。これは全国レベルで見た場合の話であり、へき地にも当てはまるとは限りません。ある程度は改善される可能性もありますが、大半の医師が都市部に集中すると考えられるため、へき地の医師不足が解消されるかは不安が残ります。地域間の偏在がより顕著になり、医療サービスの維持が困難になる懸念もあります。へき地に関しては、今後もしばらく””売り手市場””が続くでしょう。