医師の需要の変化とともに医師の負担は増えていくと考えられる
医師に求められるニーズは年々変化していますが、今後はその変化が医師に負担になっていくとも考えられます。今までの医師は、一つの症例に強みを持てばやっていける、といっても過言ではありませんでした。現在でも特定の疾病の治療が得意な医師や、その分野で有名な医師も多数います。しかし、これからの時代はそうもいかず、医師に求められるものが多様化していくのです。
日本人の平均寿命は年々伸びていますが、それは複合疾患の患者が増えることも意味します。人間は年齢とともに病気のリスクが高まるため、患者の気づかぬ内に病へ侵されている可能性もあるでしょう。これからの医師には、それら様々な疾病を見抜けるスキルが求められるのです。また、日本人の2人に1人が発症するとも言われるがんですが、治療のニーズが高まると考えられます。がんは長期的な治療が必要な病気であり、医師は長期計画を立てて治療に当たらなくてはいけません。
こうした患者の変化によって、医師の需要や求められるスキルも変わっていくと考えられます。時代とともに変化するのは当たり前といえますが、反対に医師の負担も高まる可能性があるでしょう。例えば、勤務時間が変化して疲労が増えることや、医師に対するプレッシャーが強まり、精神面への負担も強くなると考えられます。しかし、医師も1人の人間ですから、今後はQOLの向上を意識したり、メンタルをケアするための環境を整えるなどの工夫が求められるでしょう。(当サイトでは地域医療構想と医療における2025年問題という記事も執筆していますので、お時間がよろしい方はぜひこちらの記事も読んでいただきたいです。)
医師のモチベーションを支える3つの基盤とは
医師に求められるものが変わるなら、医師も働き方を変えていくべきです。今後も楽しく・長く働くためには、モチベーションに重点を置くと良いですが。ただし、漫然と働いても楽しくありませんし、モチベーションも保てません。鍵となるワードは「報酬」・「自己表現」・「動機」の3つです。
「報酬」
報酬はモチベーションに直結する大切なファクターです。言うまでもありませんが、良い報酬を貰えるならやる気にも繋がるものです。ただし、民間病院と自治体病院とでは給与の平均相場がかい離しています。モチベーションを高めるためには、それぞれの相場と同等か、それ以上の報酬を得られる転職先を見つけるべきでしょう。
「自己表現」
自己表現は、自分の将来的な夢や目標を持つことを指します。今後なにをしたいか考え、それを実現するための具体的な行動を考え、実行することが大切です。キャリアアップは自己表現の一つの手段といえますが、実現するなら転職も視野に入るでしょう。また、同様の手段としてはQOLの向上も考えられます。その場合は転科も候補になりますが、一からスタートするのと同じため、転職以上の覚悟が必要になります。
「動機」
そして3つ目の動機ですが、これは患者に感謝されたり、スタッフに尊敬されることなどが当てはまります。日頃の行いが関わるため、場合によっては考えを改める必要もあります。これを実現するには、患者のニーズを汲み取り、スタッフの模範となるような行動を取るべきでしょう。患者とスタッフ、双方の立場になって物事を考える柔軟性も求められますが、モチベーションを維持する重要なファクターとなります。
今後を考えるなら、これら3つを実現できる環境を整えることが重要です。最良の手段は転職ですが、安易に転職先を選ぶと痛い目に遭います。報酬を確認し、やりがいやキャリアアップの可能性を判断して選びましょう。
医師の働き方の改革・負担軽減の具体案
医師の労働環境はある意味ブラックとも判断できますが、働き方の改革や負担軽減の取り組みが実施されています。今後を見据えた取り組みも計画されているため、医師を取り巻く環境は改善傾向にあるといえるでしょう。なぜなら、厚生労働省を主体にした以下の施策が検討されているからです。
- フィジシャン・アシスタント(PA)の創設と活用
- AIやIoTなどテクノロジーの活用・推進
この中で目を引くものがPAの創設でしょう。厚生労働省では、海外での事例を参考にPAの資格を設けることが検討されています。簡易的な診断・処方や外科助手などが具体案として盛り込まれており、現役医師の負担軽減が期待されています。他にも、技術革新が進むAIの活用やIoTと医療の連携も模索中です。こうしたIT技術との連携は期待度が高く、医師の業務の変革も期待されるほどです。AIによる画像診断が普及したり、IoTによるライフログのデータ活用が進み、医師の業務負担が軽減されると考えられます。その反面、医師にもITの知識が求められるため、今後はIT技術に詳しい医師も重宝されると予想されます。