人口10万人当たりの医師数は全国45位の千葉県

千葉県は首都圏であるとともに人口がトップクラスの県です。交通利便性が良く、生活環境も整っていることから、住みやすさが魅力の県といえます。そのため、子育て世代にも人気が高いのですが、人口10万人あたりの医師数が全国ワースト3位なのです。千葉県は大規模な病院が多く、医療機関の数そのものについては充実しています。しかし、そのイメージとは裏腹に医師は不足しており、1医療機関ごとの平均数も全国では下位になっています。

千葉県の人口10万人あたりの医師数は、2016年度で196.9人となっており、前回(2014年)の調査よりも7.5人ほど増加しています。ただ、全国平均には届いておらず、医師不足が常態化しています。千葉県は毎年人口が増加している反面、それに追いついていない状況が背景にあります。医師の増加率そのものは全国平均とほぼ同じですが、医師数自体が少ないため、早急な確保が求められているのです。今後も医師数の増加は見込まれますが、全国平均も増えているため、徐々にかい離していくと考えられます。

千葉県の医師確保対策

全国の都道府県の中でも、特に医師不足が深刻な千葉県ですが、県を挙げて医師確保のための事業・取り組みを行っています。中でも目を引くのが、千葉県地域医療支援センターと各種修学資金の貸与制度の2つです。どちらも千葉県の医師確保対策の柱になっており、他の都道府県と比べて手厚い支援を実施しています。千葉県は医師数が全国平均を下回るものの、増加率自体が高いことから、これらの施策が一定の効果を上げていると考えられるでしょう。

千葉県地域医療支援センターの設置

千葉県では、2012年に地域医療支援センターを開設しました。医師確保対策推進の中心に位置付けられており、地域の医療機関や医療関係者と連携し、医師の地域偏在を解消することが目的です。地域利用に興味がある医学生への情報発信と各種支援活動はもちろん、現役医師へのサポートなどの役割を担います。

千葉県地域医療支援センターは5つの事業を手がけています。

  • 医師の充足状況の調査や分析
  • 医師が不足している医療機関への支援
  • 医師のキャリアアップ支援
  • 求職・求人情報の発信と就業相談対応
  • 地域関係者との協力やネットワーク構築

こうした事業から、医師を総合的にフォローする役割を持つことが分かります。千葉県が医師確保策の充実に努めている姿勢も見て取れるでしょう。今では多数の都道府県が地域医療支援センターを開設しています。しかし、総合支援を行っているケースは限られるため、千葉県は良いモデルケースになるでしょう。

修学資金貸与制度

千葉県はもう一つ力を入れているのが医学部生の教育支援です。将来の地域医療を担う医師を育成するため、医学部入学者に対して修学金の貸与を行っています。2008年度より開始されましたが、学生の負担を軽減し、医学部へ通いやすくすることを目的にしています。

ただし、他の支援制度とは少しスキームが変わっています。修学資金貸与制度の流れですが、まず千葉県が県内に附属病院を持つ東京都内の医科大学へ負担金を支払います。次に大学側が卒後に千葉県内で勤務を希望する医学部入学者に対し、在学中に最大3,200万円の資金を貸与するのです。フル活用すれば学費を6年間で350万円程度に減らせるのが強みです。

この修学資金貸与制度は、千葉県内の自治体病院で9年間(一部の診療科は7年)勤務すれば返還が全額免除されます。条件はやや厳しくなっているのですが、修学資金の最大額が非常に大きく、単純な金額だけを見ると全国でもトップレベルです。

また、後期課程へ入った研修医に対しても貸与を実施しています。小児科など一部の診療科に限定されていますが、月20万円が貸与され、研究資金に充てることが可能です。返還免除の条件は優しく、後期研修後に指定の自治体病院で貸与期間と同じ期間働けば額免除となります。このように、入学~後期研修課程まで手厚い支援を受けられるのが強みの制度です。