静岡県の医師確保対策

静岡県は、人口10万人あたりの医師数が200.8人(2016年度)と、全国平均を40人近く下回っています。医師数の増加率は全国平均とほぼ同じ水準で増えていますが、平均数からは医師の不足・偏在で悩んでいる実情が見て取れます。静岡県の場合、医師の増え方自体には何ら問題がありません。しかし、県全体の医師数そのものが足りていないのです。

ただ、静岡県では今後の医療の変化などへ備えるため、様々な取り組みを実施しています。医師不足を解消するために、医師の派遣や助成金など一般的な事業も手がけていますが、それ以上に注目をしておきたいのが将来の需要動向の調査・分析です。この取り組みによって、医師の偏在が緩和されたり、若手医師育成の役立てたりすることが期待されています。

浜松医大と連携し医療需要の調査分析を進めている

他の都道府県は、国(厚生労働省)のデータを基に医療計画などを立てていますが、静岡県は独自に調査・分析を行うことにしました。2018年度に浜松医科大学と連携し、県内の地域ごとの医療需要を現状を把握し、将来を見据えた調査分析へと乗り出したのです。まずは新規事業化予算として3,000万円が計上されています。

具体的には、浜松医大がチームを組み、静岡県内の医療圏または診療科目ごとに専門医のニーズを調査し、将来どの程度必要かを分析するとしています。そして県内外にある大学医局と連携し、医師不足で悩む病院に対して指導医を派遣、若手医師の養成に取り組むことが目標です。医師不足が深刻化している地域において、若手医師を育成するための基礎資料にすることも検討されています。

静岡県は慢性的な医師不足となっているエリアや、特定の診療科における医師の偏在が問題になっています。この調査では地域ごとの現状をチェックし、それを踏まえた医師の適切な配置にも繋げることも期待されています。これについては、静岡県や医療機関の関係者らが参加する地域医療支援調整委員会を新たに設立し、協議を行うとしています。医育大学と連携して需要予測を分析し、最終的に医師の偏在化を解消する手法はかなり珍しいといえるでしょう。

引用:http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/surg2/index-j.html

医師が不足する公的病院への医師派遣

静岡県にある公的病院では、医師の偏在化が問題になっています。そこで静岡県は医師不足で悩む公的病院を支援するため、県立病院から公的病院に医師の派遣を実施しています。主に静岡県立総合病院と県立こども病院の2医療機関から医師の派遣を行っています。これら2医療機関において常勤の医師を確保、その上で診療科内の調節を行い、各公的病院へと医師が派遣されています。

2007年度には、袋井市民病院に医師が週3日ほど派遣された実績があります。同病院は袋井市の基幹病院ですが、小児科の医師が不足しており、維持が難しい状況になっていました。そうした背景があることから、静岡県は県立こども病院より医師を派遣し、小児科の維持のための支援を実施したのです。あくまで緊急措置として行われた取り組みですが、フレキシブルに対応したことは評価に値するでしょう。このような取り組みがあれば、地域間の医療格差も緩和できると考えられます。

最大400万円の研修助成

静岡県は若手医師の育成にも力を入れています。特に研修に関する助成金は非常に珍しい取り組みといえるでしょう。この研修助成は、国内外の病院・医療機関で研修を希望する医師を対象に、発生する研修費用の2分の1を補助するものです。最大額は400万円となっています。助成金の支給条件は、研修後に静岡県内の公的病院で一定期間勤務することです。この条件を満たせば助成金が支給されます。

研修助成を行う目的は人材の確保や医療水準の向上にあります。静岡県内の医師不足を解消し、更に地域医療の質・水準を向上させると、病院の魅力そのものが上がると考えられています。