日本一離島が多い長崎県

壱岐や対馬、五島列島などを有する長崎県は、九州の最西端にある県で、3方を海に囲まれています。実は日本で最も離島が多く、その島の数にも971上ります。これは2番目に多い鹿児島県の1.5倍以上となっています。このうち有人島は72ほどあり、県人口のおよそ1割の方が住んでいます。しかし、最も人口が多い福江島でも3万人台であり、100人以下しか住んでいない島も少なくはありません。ただ、離島が多いということは、医療サービスの格差が広がりやすいことに繋がります。

離島の医師不足は厳しい状況

長崎県の医師数は全国平均を大幅に上回っており、2012年時点では、人口10万人あたり287,6人(全国平均は235.8人)の医師がいます。しかし、そのほとんどは長崎市・県央地区に偏っており、離島では全国平均を大きく下回っているのです。例えば、対馬地区は169.4人、壱岐地区に至っては130.6人しかおらず、全国平均よりも65~95人も少ない状況になっています。

なお、長崎地区などでは人口10万人あたりの医師数が増えていますが、離島については上五島地区を除いて減少しています。特に壱岐地区は減少が著しく、2010年から2012年にかけ、16人程度も減っているのです(2010年度は146.4人)。このため、離島は医師の確保が急務になっていますが、年々医療格差が広がっている実情が見て取れます。

「ながさき地域医療人材支援センター」の取り組み

しかし、長崎県では様々な医師確保策を講じており、特に離島での医師不足・偏在解消に努めています。昭和40年代から離島の医療政策に力を入れていますが、2012年には「ながさき地域医療人材支援センター」を設置し、包括的な取り組みを実施しています。

ながさき地域医療人材支援センターは県の医療政策の柱になっており、長崎大学病院の中に拠点を構えています。更に内部組織として「へき地・離島医療支援センター」が開設されており、離島の診療所への医師派遣など離島の医療政策全般を担っています。現在は大学医局と連携し、以下のような取り組みを通じて医師の偏在解消に努めています。

  • 医師の受給状況の調査分析(アンケートの実施など)
  • 医師不足で悩む病院への人的支援(医師の派遣や公募による紹介・斡旋)
  • 現役医師のキャリア形成支援(育成プログラムの実施・養成医の支援)
  • 県外への情報発信(情報誌による医師の募集・県外医師からの相談窓口開設)

これら4つの取り組みを中心として、離島やへき地の医師確保を行っています。なお、長崎県はセンターの運営・支援のみに注力し、センターが中心になって県の医療政策を実施しているのが特徴です。これが他県の医療政策との大きな違いといえるでしょう。役割分担することで、スムーズに取り組めるような体制が整えられています。県全体では医師数が全国平均を上回っているのも、こうしたスキームによるところが大きいでしょう。