日時 平成20年11月27日(木) 16:00~18:00
場所 (財)地域総合整備財団 1階会議室(東京都千代田区平河町2-5-6)
出席者
委員
杉並区 政策経営部企画課 行政管理担当係長 今井 一
首都大学東京大学院 教授 大杉 覚
財団法人地域総合整備財団 常務理事 小川 登美夫
神奈川県立保健福祉大学 教授 河 幹夫
総務省 自治行政局合併推進課 行政体制整備室長 吉川 浩民
倉敷市 総合政策局企画財政部 行政経営課 渡邉 直樹
ゲスト講師
関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科 教授 稲沢 克祐
愛知県 総務部総務課 行政経営企画グループ 主査 深谷 武彦
株式会社 ネクストキャリア 取締役会長 森下 一乗
佐賀県 統括本部情報・業務改革課 参事 脇山 行人
議事次第
1.開 会
2.議事
(1)愛知県からの事例報告(関西学院大学稲沢教授からの説明を含む)
(2)佐賀県からの事例報告
(3)株式会社ネクストキャリアからの事例報告
(4)地方公共団体の市場化テストの取組みに関する問題点等について
3.閉会
1.開会
*委員長あいさつ、並びに河委員紹介。
2.議事
(1)愛知県からの事例報告
深谷氏
<モデル事業の位置づけ>
* 民間活力活用の方策の1つ。公共サービス改革法の施行を受けて、導入に向けた具体的作業を開始したというところ。
* 「あいち行革大綱2005」の個別取組み事項として、「市場化テストに係る取組の推進(平成20年度以降」の導入検討。今年3月に後半(平成20~22年度)の取組みとして、改定。
<モデル事業の概要>
* 平成19年度は、民民の競争は特に視野に入れていなかった。官民比較をするという前提。そのためには手続的に官と民の両側にとって、中立な公正・透明な手続を図る必要があるということを意識した。
* はじめに、「集中受付期間」を設けた。民間事業者、県民を含めて、県が実施している業務について、民間事業者でできるのではないかといった旨の意見や提案を1か月間、募集をした。次に、モデル事業の監理委員会を設置して、民間事業者からの意見を踏まえ、市場化テストにかける業務を絞り込んだ。さらに、絞り込んだ業務の中から具体的に、総務部(事務局)が、各部局ヒアリングなどを行い、民間委託の可能性を検討し、どちらか判断がつかない事業を掘り起こしていった。
* 実施要項、落札決定基準を踏まえて、入札を実施した。
* 結果として、旅券申請は、民間事業者が落札。職員研修事務は、官が業務実施者として決定した。
* 旅券申請については、民間事業者は、本年度4月から業務に携わっている。県民の評判は上々で、対応が明るいという印象を受けたということも聞いている。
* 引き続き官が業務を行っている職員研修事務においては、職員自身が、これまでに比べ、効率化していこうと努力するような意識改革が図られた様子が見られる。単に民間開放という一方的な取組みではなくて、官の業務改善・改革という効果も表れたと感じている。
<平成20年度のモデル事業>
* 受付期間は、1ヶ月ほど。前回に比べて、なかなか新たな意見が出てこなかった。
* 19年度に募集した意見で選に漏れたものの、それでもまだ十分比較の対象になるものが残っていた。それが、公共職業訓練のOAビジネス科というもの。よって、これを対象にして実施した。
* OAビジネス業務は、官が実施者として決定した。官の提案では、公共職業訓練利用者は、幅広い年齢であるため、それぞれの習熟度に合わせた訓練の実施、希望者への補講などを専任の訓練指導員が担当することによって充実した指導体制が実現できる点が評価を得た。
<意見募集の実施>
* 「選定に当たっては、業務の担い手となる民間事業者等からも幅広く意見を聴くとともに、後述の委員会での議論を踏まえることとする」とした。
* 提案者には、特に入札に参加することを条件づけせずに、幅広く自由な積極的な意見を募った。
* 監理委員会を設置した。これは法定の審議会ではないが、一連の手続の透明性・中立性・公正性の確保のために設置。
* 専門委員の選抜をした。20年度からの取組みとして、業務に精通した専門家が、その業務の評価基準や、実施者の決定の部分で専門性が必要ではないかということで新たに参画をお願いした。
<モデル事業選定のポイント>
* 民間事業者にとって、施設や人材の投資において、過度の負担をかけないような事業。
* ある程度まとまりのある業務。
* 他県で実施している業務。
* 単年度で実施可能な業務。
<入札>
* 官と民では、その事業に関する情報量が違う。よって、民間事業者が競争力のある提案を行うために実施要項の主な記載事項として、官民比較をどう行うかの情報を記載する必要がある。そのために、業務の範囲、必要な質の設定だけではなく、実施者を決定するための選定基準を明らかにした。
* 「受託者の報告状況(経費の把握)」は、他の自治体が、民間委託をした際に、その後の経費の把握ができなくなったという情報があった。したがって、実施要項で義務づけた。
* 対象業務は、質と価格を総合的に委員会で評価し、決定をした。
* 事務分担は、総務部が事務局を運営しており、実施要項の作成にあたっては、対象業務の主管部長の協力、情報提供を受けた。入札は総務部が実施。
* 入札の結果、民間事業者が落札した場合、その対象業務部署が提案額に基づき予算の要求、契約、年度が明けてからのモニタリング、監理監督を行うという手続。
* 旅券の申請窓口の場合、日々業務を提供しているため、業務が寸断されることのないように、「事務引き継ぎ」として必要に応じて十分な事務引き継ぎ、あるいは準備行為を行うことを盛り込んでいる。
* 「モニタリング」については、実施要項、条件に従って実施されているかを定期的にモニタリングすることにしている。
<事務上で留意したポイント>
* 対象業務の切り出し。実際どの業務が今回の対象にするかということを明らかにする。その中で県が実施すべき業務として、住基ネット関連がある。
* 内部管理事務として、その業務に直接当たるわけではなく、その業務を管理する内部管理の部分は比率計算し、間接費として切り出しをし、対象業務の範疇に含めた。
<質の設定>
* 数値化できる指標を意識した。旅券の場合は、終了時間5時30分までに書類を引き渡して業務を終了する。そのためには、目安で、年間件数が想定できるので、1申請書当たりの平均処理時間が分かる。
* 質が確保された場合のインセンティブ、確保されなかったディスインセンティブは、既に市場化テストだけでなく、委託そのものの課題。今回は特に設定まではせずに、未達の場合、県からの改善指示、その指示に従わない、明らかに実施できないという場合に、解除の可能性を実施要項や、実施要項に基づいた契約書に織り込んだ。
<フルコストの推計>
* 内閣府の指針をベースに、直接人件費、物件費は勿論、間接経費についても、退職給付費用、減価償却費、管理業務の人件費・物件費について推計をした。
<プロセスの透明性・公正性の確保>
* 官民の情報格差の是正ということに配慮した。
* 官民比較なので、情報遮断措置についても明記した。
* 情報の開示については、官民同時に、官民合わせて公の場で実施。
* 対象事業の選定のためのマーケティング調査の実施。実際に民間事業者が実施可能か、民間のリサーチ会社にマーケィング調査を委託。
* 「予定価格の提示」は、官民間の公平性、あるいは価格超過による失格の予防に配慮して、予定価格は提示している。
<今後の検討課題>
* 円滑な事務引き継ぎ。業務の継続性の観点から大変重要。いずれの業務についても留意する必要がある。
* 「請負契約」における偽装請負の回避。管理の仕方によっては、「労働者派遣契約」に相当するため、十分な配慮が必要。最終的に業務は県が責任を負う。
* 予定価格の設定において、引き継ぎ、並びにモニタリングのコストは、民間事業者の負担として明記したが、この部分については民間事業者が委託期間の請負金額で対応しうるのかについては留意が必要。
* 実施期間については、事業者の投資が必要なものについては、事業の内容も規模も大きくなっている。民間事業者に、初期投資が必要な可能性があるような場合は、複数年契約などの条件を整備するなど、参入の障壁をなくしていく取組みを図っていきたい。
(2)関西学院大学稲沢教授(愛知県市場化テストモデル事業監理委員会座長)からの報告
稲沢氏
<愛知県市場化テストモデル事業監理委員会で活動している際に気づいた点>
* 対象事業の選定で、平成20年度になって、民間からの提案が少なくなってきた。監理委員会として、提案の仕方についても、当初から議論をしていた。引き続き、もう少し踏み込んだ議論をしておくべきではないか。
* 対象事業を広げる際には、どういった点が必要か、もう少し詳しい情報提供ができれば良かったのではないか。
* 活動基準原価計算のアプローチを掲げているが、どのような作業のフローチャートで、どの程度の負荷があるのかなど、何らかの情報提供ができないのか。
* 「官民のコスト比較」の点で、通常は効率性を評価するのに適切と考えられるフルコストアプローチを使っているはず。例えば、官側がフルコストで100、そのうち退職給付引当金、減価償却費用など、発生主義ベースの経費が30とすると現金支出額が70となる。民間側の提案は、フルコストで計算されて、それが委託料になる。現金支出額が80と提案された場合、同様に発生主義ベースのコストが30含まれていても、80で、100対80となり民間側がコスト有利という判断が出る。しかし、実際に現金支出額で見ると70対80ということになるため、財政サイド、あえて言えば議会サイドから見ても、なぜ70と80で80を選ぶのかという疑問は出る。この点については、行政の退職給付引当金についても発生主義の考え方を取れば、帳尻は合うはずであるから、自治体の退職金資金手当に関する問題等を考えれば、予算ベースでの発生主義ということを考慮して説明することを繰り返していく必要があるのではないか。
* 間接費の問題については、コスト比較として、フルコストアプローチを使っていると思うが、もう一つ、可避コストアプローチがある。これは委託等を行った場合に、避けることができるコストの計算比較を行っていく方法。この可避アプローチを使っても限界は当然ある。委託時に、直接作業に当たっていた直営人員が十分に削減できない場合には、直営のコストにプラス委託料として支出額が大きくなる。このため、不可避コストの監理が重要になる。大きな委託をした場合コスト増加も考えられる。その対応として、資料に示すような不可避コストに入札価格を載せる形で比較したらどうかという折衷アプローチが提案されている。
* 限界はあるが、その限界の1つは、間接部門がどこまで落とし込めるかというところだが、イギリスの強制競争入札では、結果に応じて間接部門の人員も変化させるといった方法を取っている事例がある。
* 監理委員会としてこれまでの仕事を振り返ると、モニタリングの問題が大きいと思われる。もう少しきめこまやかなモニタリングができなかったろうかということを感じている。
* 官民両者のモニタリングの課題は、官民競争の課題というよりも、民間事業者のモニタリングであればアウトソーシングの課題、官のモニタリングならば、行政評価につながる。官をモニタリングしていくことはどういうことなのかという視点から、改めてその重要性を気づかされた。
* アウトソーシングを続けていくとどうしても官側に事業に関する情報がだんだん少なくなってくる。それについて、第三者委員会はどういった情報が必要なのかの情報充実を図るように官側に働きかける。それはモニタリングという行為を通して以外にないのではないか。これができないと委託を続けていくことで事業者の方が発注者よりも優位になってしまうことが生ずる。
* 第三者機関としての係りは、まず業務についてどういう範囲を特定していくかについて意見した。また、事業の決定、実施要項落札者決定基準についても、第三者委員会からかなり意見した。
* モニタリングは現在進行形だが、実際に官民競争を行って民間事業者に任せて、それ自体が質の向上と経費の削減という点で効果があったのかどうかという評価を、次年度に引き継ぐため、10月にしている。
(質疑応答)
Q(小川委員長):モデルという名前を入れているのは、試行的にという意味でのモデルか。
A(深谷氏):言葉どおり試行的にということ。
Q(小川委員長):その業務そのものが必要かどうかというのは、別のところで検討するのか。
A(深谷氏):愛知県の場合は、行政評価が、その取組みに入っている。行政評価の中でその事業を継続するか、廃止するか決定する。
* (稲沢氏):監理委員会の中で、「対象業務の選定」とあるが、これは民間事業者から提案の中で、一つひとつ業務の内容をヒアリングしていくと、「この業務自体は果たして必要性があるのか。」という問いかけを行っている。公共サービス改革法でも官民競争入札、または民間競争入札と、廃止という言葉が先に来るから入札に進めるという考え方を取っているかと思うので、それに従って意見を申し上げた記憶がある。
Q(小川委員長):概念的には廃止がインクルードされているのか。なぜ廃止できないのかというところから議論するのか。
A(稲沢氏):我々の意見としては申し上げるが、それを決定するのは当然官だと思っている。
Q(小川委員長):モニタリングの時期、中身、どういう指標でやるかというのは、業務によって大分違い、ご苦労があるかと察するが、どのように対処されているのか。
A(深谷氏):そこは最初の要綱で設定した質の観点からモニタリングをやっていった。あるいは、プラスαとして、企画していただいたものについての実施状況についてもお伺いをしているというところ。
Q(小川委員長):そうすると、最初に実施基準で、どっちを選ぶのかという基準をつくるが、それが最終的に、一気通貫で大事になるということか。それがうまくできていると、うまく動くかもしれないし、うまくできていないと何をやっているかわからなくなるという懸念があるのではないか。
A(深谷氏):それは実施してみて、課題として若干出てくるところはあった。
*(小川委員長):やりながら修正を加えるということが、あり得るという前提でやっていると理解した。
Q(渡邉委員):前回も言ったが、民間企業にお願いして、市場化テストでも民間委託でも指定管理でも何でも良いが、民間企業が実施して、新しい価値を生むかどうかということが非常に重要だと思っている。例えば、この旅券業務で、新しい価値というのは何かなと思ったときに、例えば窓口が増えるとか、時間が延長するとか、ちょっとハードルは高いですが、トラベラーズチェックを売るとか、旅行業者のパンフを置かして広告収入を得るとか、いろんなことが考えられると思う。では、今回の取組みの中ではどう整理したのか。
A(深谷氏):新しい価値という部分は、若干色合いは薄い。仕様発注の考え方に近づいてくるが、現在の業務の中で、質を確保していただければ、そのやりようは創意工夫を是非発揮していただきたいところである。が、例えば今言われたような部分については、官の側の協力も必要な部分もあるかと思う。したがって、官民を比較する手続の中では付加価値的なところで、本質論としての議論には至っていない。
Q(渡邉委員):モデル事業として選定ポイントにおいて「選定の際、除外した業務」のひとつとして、「今後、他制度(指定管理者制度):の活用を検討する可能性が高い業務」としているが、指定管理者を入れるなら、この際市場化テストをやって官がいいか民がいいか、先に決めてもよいのではと思うが、なぜここを外したのか。
A(深谷氏):前提は直営の施設について、今後、指定管理者制度を導入していくかどうか。市場化テストならびに指定管理者制度のどちらにも可能性もあるという趣旨。今後導入していくに当たっては、現在の直営の施設については、廃止するかどうかはさておき、直営のままでやるか、指定管理者制度を導入するか、そういった選択をする際のツールとして、市場化テストを使うという可能性は出てくる。ただ、モデル事業としては行っていない。
Q(小川委員長):市場化テストは、だれを選ぶかという手法で、指定管理者というのは、別の意味での権限を与えてしまう。よって、除外したという意味か。最初から区分できるというのではなくて、モデル事業として外すと。指定管理者制度を検討するときに、だれを選ぶかというのは、行政がそのままやるなら、指定管理者ではない。でも、やってみて民間の方が良いと思ったときに、民間がやるのは、単純な民間委託ではなくて指定管理者を使うということはあり得るのか。
A(深谷氏):はい。そういう場合は、公の施設の管理という自治法のスキームの話。
*(小川委員長):業務でも公の施設の管理として限られるが、それは民間委託だけではなくて、使用料、手数料の決定だとかを含めて、権限を与えた方が良いというときには、指定管理者制度を使うというケースあり得ると理解した。
Q(今井委員):自治体としては、事業評価を行って、それに対して、委員会での事業仕分け的な要素もあるということか。公か、または民でやるかも含めて、意見を伺った中でモデルを決めていくという感じになるのか。
A(深谷氏):事業仕分けは、委員会の議論の中では、含まれていないということだと思う。ある意味狭い取組みと理解して良いかと思う。民間事業者の意見を元に、所管部局からその業務をひきはかず作業ということである。事業仕分けというのは、廃止か継続か、あるいは対象は県か市町村か国がやるかということも一連の流れということだとすると、そこまで業務の中に含めてはいないということ。
Q(今井委員):入札の方式だが、事業者の継続性というのは、契約自体は単年度になるのか。
A(深谷氏):モデル事業は今回単年度だったので、来年3月で契約は終了。新たな入札を市場化テストという手続を取るかはさておき、入札という手続を繰り返すということ。ただ、旅券の場合はまだ予算も決まっていないので、検討として複数年契約を検討していると聞いている。
Q(今井委員):この実績をモニタリングを含めて何らかのインセンティブ的な発想はあるということか。
A(深谷氏):そこはやはり課題。市場化テストに限らず、指定管理者制度でも同様な議論があり得ると思うが、現在実施している事業者の成果をどう生かすかというのは、やはり審査の中で、アピールポイントとして受け止める。あるいは、主張していただくのが、現在の精一杯なところかなというのが実態。
Q(今井委員):単年度だと、事業者にとって、メリットはないのでは。
A(深谷氏):それは今回よく分かった点。
A(今井委員):杉並区は、3年目に入って件数が減ったところで、企業側の立場を見ると、メリットが少ない。単年度というと、一生懸命やっても1年で終了。杉並区は、そこが壁で今後の検討課題だ。
Q(大杉委員):職員研修業務も、官がやっているが、これも単年度なのか。
A(深谷氏):はい。
Q(大杉委員):事務の引き継ぎということで言うと、具体的にはどれくらい、このケースで言うとどういう形で行われているのか。
A(深谷氏):一応、実施者が決まった後(11月)、所管部署に渡した。所管部署からの最初の申し入れとして、パスポートの件数、業務が多忙な時期と比較的手薄な時期があるので、そういった手薄な時期という意味合いも含めて12月から民間事業者の方からの引き継ぎと言うか、事務を見ていただく申し出はあった。民間事業者も4月から人の手当をするので、12月から人を雇うと、コストがかかってしまうという事情も恐らくあっただろう。年度末近くなって、人を集めて、パスポートセンターの方で業務を引き継ぐという流れで、結果としては、ぎりぎりになっての業務の引き継ぎ、具体的な作業の説明となった。そういった部分が若干、反省点が残ったというのが実態。
Q(大杉委員):マニュアルについては、既に県の方でやっていた時点でも使っていたマニュアルと同じものをということか。
A(深谷氏):はい。
Q(大杉委員):市場化テストをかけるときにある程度業務フローについても、少し細か目のものを示すということはされたのか。
A(深谷氏):多分今言われたフロー図はなかったと思われる。もともと嘱託ではあるが、直営業務だったので、業務フローのようなものは恐らくはなく、現場で実際に業務に当たって慣れていくといった部分ではないかと思う。
Q(大杉委員):もう一つ、モニタリングということだが、これも具体的に例えば旅券業務なら、定期的にモニタリングをすると書かれているが、どういうような手法なのか。
A(深谷氏):他の自治体の事例だと、パスポートセンターについては、「受付、チェック、交付」という大まかに3段階がある。愛知県は、受付だけ今回市場化テストにかけた。チェックは県が直営で、交付は別に民間企業に委託されているので、職員と民間事業者が顔を会わせている。途中、質の確保で言ったように5時30分に物を引き渡すだとか、5分以内に処理をするとか、そういったことは日々の集計として積み上がっている。これは、モニタリングというか、日々の業務報告と言うかは、若干あいまいだが、日々の業務報告でも実態は把握できてしまうということ。
Q(大杉委員):ある程度、日々の業務報告をデータとして蓄積して、それが稲沢先生の委員会の方にも報告されるということか。
A(深谷氏): はい。
(2)佐賀県からの事例報告
脇山氏
<制度の背景>
* 本制度は平成18年に開始。
* 平成18年度時点で、情報業務改革課が、業務改革のため、事業仕分けや市場化テストを検討。
* 同時期に、NPOなどとの県民協働の推進も検討。それらの考えをまとめて、スタートした。
* 知事(平成15年初当選古川知事)の公約「県民の満足度を高める」として、県庁内の組織改革があった。
* 基本理念は、「オープン、現場主義、県民協働」。協働化テストは、この3の理念を実現するための1つの手法。
* アウトソーシングは、かなり積極的にやっている。
* コスト分析は、独自に人件費相当額を含めたABC(Activity Based Costing:活動基準原価計算)評価をやっている。
* 本事業の担い手は、CSO(市民社会組織)や企業を対象としている。CSOに想定されるものは、NPOなどの志縁組織だけでなく、地元自治会、婦人会などの地縁組織も含む。CSOの力を活用しながら、新たな公共を作っていくことが目的。
* CSOや企業において、今まで以上に公共サービス分野での活動が活発化。
* 行政サービスのニーズが多様化している。この状況下で、従来の公共サービスの在り方を改めて定義し直すことが可能なのではという発想の下、協働化テストという制度を設けた。
<協働化テストとは>
* 協働化テストの大原則として、県庁の全ての業務(警察及び県立学校を除く)を県民に明らかにする。昨年度からは、人件費相当額を含めたコストも含めて公表することにした。
* 提案を受ける際に、実際に色んな地域をまわった。提案書を書く前に、実際に相談会を設けた。思いつき的な話でも、県の担当者と評議をする中で、具体的な提案書に仕上げ、それを提案として出していただいている。
* コスト削減や効率性を無視しているわけではないが、基本的に、県民の満足度向上が第一目標。それに伴って、様々な公共サービスの担い手の多様化を図っていく。
<協働化テスト導入前後の情報開示>
* 県が行っている業務は、基本的には全部県民に公開する。それは予算の有無にかかわらず、例えば許認可業務も含む。県民の目にさらされることによって、協働化テストとしての効果だけではなく、県庁内に多様な影響をもたらしているのではないかと思っている。
<『市場化テスト』と佐賀県の『協働化テスト』の対比>
* 市場化テストが官民競争だとすると、協働化テストは、アウトソーシング、協働の提案公募。提案があれば、競争をする。
* 協働化テストにおける官民競争については、第三者委員会で審議をするわけではなく、それぞれの担当部署が提案実現の可能性について協議する。コスト比較、質の問題も含んでいる。
* 「ショートリスト選定のベース」は、民間から県業務の担い手の在り方についての提案がなされた事業については、全てを検討するということ。
* 決定方法は、提案者と県の間で協議する。その協議の中で問題点、課題を整理し、その上で採用の不可を決定する。(各本部長が判断し、判断結果については知事報告を義務化している。)
* 提案者=事業実施者にはなり得ない。要件としては、提案者には実施する能力があるということを求めてはいるが、実際にそれを契約するのは、いわゆる自治法の手続に基づく入札等で行っている。
* 委員会は設置していないが、「可能な限りの情報開示、民間による企画提案競争」という形で実施している。
<平成20年度の進め方>
* 県内12の中間支援組織(個々のCSOを支援するCSO)が集まった「協働化テストを考える会」からの事業提案によって、制度運用を協働実施することとなった。
* 事業一覧の見せ方。以前は、課単位で一覧表を作成していたが、今年は、総合計画の体系に合わせて、課でなく、事業を全部区分した。
* 人件費相当額については、独自に民間事業とどうコスト比較をするか調査をした。それに基づいて、個別に問い合せがあったものについては、ABC評価を基本的に行う。市場化テストと同じような形で、コストについての情報提供を行う。
* モニタリングを必ずする。受託者の義務としている。一般的に、サービスを受ける側の県民満足度調査(アンケート)等を行っている。
<平成20年度の提案状況>
* 公表した佐賀県が実施している対象業務は、2,068件。外部委託協働は、今までの実績(3年間)で600件近くある。初年度は、400件近い提案があったため、全体の4分の1ぐらいは何らかの形での取組みをしているということ。
* 平成20年度に提案した団体、企業等は、56団体、提案は87件。平成18年度が59団体で、平成19年度が42団体だった。特に地元のCSOについては、かなり幅広い団体で提案をいただくようになった。
* 提案の推移につきまして、特に初年度(平成18年度)は、400件近い提案があった。今は標準的に落ち着いてきた。今年度は87件だった。
* 採択の状況は、8割近い。
* 平成19年10月から、自らが契約主体となり得る方だけ提案してもらうようにした。よって、件数は減っているが、採択率が上がっている。
<これまでの成果>
* コスト削減効果は、今のところ出ている分が約3,600万円。協働で行っているという質的な貢献がかなりあるとすると、効果が上がっていると判断する。
* 提案があった事業の所管各課がさらに真剣に取組んでいる。意識変革の意味で、非常に契機にはなった。
* 県庁の総合相談窓口をCSOが受託。来庁者が1.5倍増という効果があった。
<提案の課題等>
* CSOの提案者は増えたが、企業からの提案は減った。提案イコール契約者にはならないというディスインセンティブがある。
* 2,000事業を公表することは、県庁職員の負担感、抵抗感が非常に大きい。知事のリーダーシップでやっているというのが現実。
* 県の業務を遂行するにあたって、CSOが担い手になることには、かなり限度がある。提案が今後増加してくことは期待できないのでは。県内の市町村にも広げていく必要があるのではないか。
(質疑応答)
Q(小川委員長):提案は受けるというのが主眼なのか。競争をするという要素は余りないようだが。
A(脇山氏):提案を受けたら、競争するというより、官の側がまずイエスという方向に働くという感じ。
Q(小川委員長):意識改革の要素は、すごく大きいのかもしれないが、具体的に、役所側が、コスト削減で競争するという要素は、余りないということか。
A(脇山氏):そうではない。官側が今の業務を変えて、より削減するということはやっていない。が、現在どれだけコストをかけているかというのに対して、提案が幾らとしているのかという比較は実際に採択するときに行っている。
Q(小川委員長):提案は金額込みなのか。
A(脇山氏):書いていないが、相談する中で議論をし、大体このくらいという話をした上で採択か不採択は決める。
Q(今井委員):杉並も実は佐賀県の動きを参考にしながら、今いろいろと検討している最中。NPOも含めたCSOの育成もそうだが、継続性とか支援という部分について、かなり市町村レベルのことになるかと思うが、その辺はどうなのか。
A(脇山氏):CSOと言いながら、実質はNPOがほとんど。NPOについては、NPOを支援するCSOがあって、拠点は県からお金を出している。実はこの制度をやっていく中で、都市部と違ってNPOというのは、佐賀県でそんなにたくさんあったわけではない。が、このことを通じて、様々な業務をしていくことで、育っているのではという意識はある。そこはある意味効果といえるのではないかと思う。この制度がなかったら、提案をしようとも思わないだろうし、実際NPOと話していると、自分が今やっていることだけで一生懸命でそれ以上何かをやろうということにはならないが、その意味では非常に刺激を与えていると思う。
Q(今井委員):資料を各課で作っているようだが、このために作っているのか。
A(脇山氏):最初は、このために作った。非常に負担感が大きかったが、実は、私は、その前は、総合計画や政策評価の担当部署にいたが、政策評価側で、業務をいかに減らすか、事業の棚卸しをして、全事業をリストアップしたようなものを作っていた。今年はそれを利用して、それに幾らか加えればできるような形にした。内部で非常に手間がかかるという批判を受けていたので、あるものを整理して使うということとした。
Q(渡邉委員):NPOなどが実施している場合、事業の継続性(途中でホールドしたときにどうするのか)において、保証金などを取っているのか。それとも、育成に重きを置いて、そうなったときにはしようがないという感覚なのか。
A(脇山氏):個別の契約は、詳細に把握していないが、多分取っていないと思う。確かにその可能性がないとは言えないが、そこは十分議論をした上で実施している。今後については未定だが、今のところはうまくいっている。
(3)株式会社ネクストキャリアからの事例報告
森下氏
<現状と課題>
* 各県・地方公共団体それぞれ、入札方式が違う。市場化テストは、官民競争だという理念は理解しているが、まずは、提案競争をして、その中で2、3社選んで、その後、価格を開示する。「悪かろう、安かろう」という業者を排除するためにも必要なのではないか。
* 評価方式の確立。各委員会等で評価ポイントを事前公開する。実施して、評価は違うポイントで行われると、提案者は十分に頑張れない。事前数値の公表等も大事なことではないか。
* 引き継ぎの期間が短過ぎる。また、所管部署との引継ぎがうまくいかないケースも想定される。
* 引き継ぐ窓口の対応に十分な管理が必要。利用者に対する施設設備の利便性をより考える必要がある。
* 整備費や清掃代など、不確定な経費が出てくる。提案者として、提案書の中に反映する必要があると反省している。提案書の中に十分反映していただきたい。
* 経費開示。全般的に今までの経費は、退職手当も含めてということだろうが、企業としては十分に理解しにくい点がある。数字は出ているが、それをどう読み取るかが難しい。
* 短期間契約。「1月~3月だけまず出します」という事業がある。3ヶ月の間で人を配置し、実施しても、継続は未定では、非常に不安定。もう少し長期的な契約が、業務改善をするためにも必要。
* 地方公務員が民間へ出向できる派遣制度の必要性。大阪府から民間研修制度を7年間受託した。約20名が2年間、各企業で研修を受け、民間の知恵を持ち帰る。一方、地方公務員の民間派遣制度は、今のところないと聞いている。市場化テストを実施する際の民間と官の対立を避けるためにも、地方公務員の民間派遣制度を拡充することが双方の意識改革に役立つのではないか。
* 安値受注に対抗して、必要費用を削って出すこともある。そうなると雇用の問題につながる。1年単位では契約型でも良い社員を雇えない。3年であればもう少し長期の処遇も考えられる。新しく雇用する職員の幸せも実現できるような制度にして欲しい。
(質疑応答)
Q(今井委員):民間企業者からは、契約年度が1年では、と聞くが、行政から見ると、3年~5年だと本当に大丈夫かという不安もある。そういう意味では、モニタリングも非常に重要かと思う。そのモニタリングだが、民間から見て、今、杉並の場合は両者、我々行政の方と事業者の方と同じ評価項目で、民間事業者は実際にはフルモニタリングになるが、その両方をやって評価の違ったところについて話し合って、修正をする。そこで、お互い、いわゆる求めている質の認識を深めようというのが1つある。が、その結果が悪ければ切るとか、よければ次につなげるという、いわゆるインセンティブ的な部分をどう考えていこうかというのが1つある。事業者から見てモニタリングというのは、場合によっては一方的、いわゆる行政が出しているものだから、どうしても民間の方としては受け身になりがちなのかと考えるが、その辺はどうなのか。
A(森下氏):モニタリングされるという発想ではなくて、協働で考える。我々も仕事をやっていて改善点やよりよい方法という形でモニタリングの中に意見を入れさせていただく。そういう意味では地方公共団体も窓口が管理するというよりも、県監理委員会というような、第三者的な目で見ていただくと非常に物が言いやすくなるのではないかと思う。
Q(渡邉委員):経費や業務情報の開示が不十分で、実は倉敷市も非常に悩んでいる。もっと情報を出せればよいが、受託してみて、感想レベルで構わないので、こういうことを教えてくれていればよかったのにとか、こんなことにお金がかかるとは知らなかったということがあれば教えていただきたい。
A(森下氏):個別にそれぞれ仕様書があり、それに対してある程度読めない部分をどれだけ読み取るかと言う点で苦労している。そう大きく食い違うことはないと思うが、非常に競争の激しい箇所で、これだけコストはかかるけれども、会社の方針で提案し、赤字受託をすると、それが1年でも非常に効いてくる。それをプラスにする方法というのは非常に難しい。これ以下ではやれないというような考え方も、企業としては必要かなと思う。
*(河委員):コンピュータの機種の件で、古い機種を使用していることをあらかじめ言ってくれと森下さんが前におっしゃっていた。その当時、このような情報というのが、結構大事な情報だと思わなかったのかと指摘された。
Q(吉川委員):地方公務員の民間への派遣だが、大変重要な視点だと思う。逆の話も当然ある。国家公務員は官民交流法というのが一応あって、制度的にやれるようになっている。実は佐賀県はこれをつくろうという制度要望をずっと国に出していて、それはどちらかというと、民間の方からきちんとした形で受け入れたいということなのだが、今のこれまでのお話を聞いていると、両方あった方が良いだろうなという気がする。それは総務省がだめと言っていて、地方公務員の官民交流法というのはずっと止まっている。
A(森下氏):大阪府の人事課の方も非常に苦労されて、私ども相談を受けたが、やはり出向、派遣は法律上できない。そこで、民間で研修をするというのは非常に良いのではないかということで、人事院もそれは仕方がないというので、道が開かれた。地方公共団体も積極的に働きかけて欲しい。
Q(小川委員長):派遣法にはなかったのか。
A(吉川委員):あれは3セク派遣法だから、関係のあるところだけが範囲となる。
Q(小川委員長):国家公務員はどうなのか。
A(吉川委員):官民交流法になる。
Q(小川委員長):民でもいいのか。
A(吉川委員):可能なようだ。
A(河委員):かなり制約が大きいようだ。
A(渡邉委員):私は、市役所しかいったことがないが、民間企業の方と話をしていて、利益の考え方とか、コストの考え方など、ぴんと来ない。一度は体験してみないとわからない部分が多分あるかと思う。例えば、幹部に説明するときに、埋没費用とか、不可避コストという話をしても、そもそも理解が難しいようだ。
(森下氏):地方公共団体の市場化テストは、だんだん広がっていくと思うし、企 業は、それはそれで魅力的だと思っているが、会社というのは、利益を求める集 団で、その会社の性格が、公共サービスに向くかどうかというのはよく見ていた だかないといけない。利益重視の会社が実施すると、逆にサービスはなくても仕 様書どおりにやればいいという、そういう企業もありうるので企画書を重視して サービス内容を見極めていただきたい。
Q(小川委員長):民間同士の取引においても、長年の信頼関係が、重要な要素かと思う。官と民で文化が違うところで実施するのだから、情報公開とは言っているが、別の要素を考えていかないと、必ず不安が付きまとうのではないか。官民の信頼関係というのは、それは別の言葉で言うと癒着ともとれ、なかなか難しいかと思うが。
A(森下氏):それは私ども非常に気をつけている。例えば、個人的なお付き合いは避けるなど。事務所でお互いの本音で話をすることが大切と思う。
* (小川委員長):プロジェクトの改善のような話というのは、相当親密にお互いに情報交換をして、相談していかないとよくならないと思う。
(4)地方公共団体の市場化テストの取組みに関する問題点などについて
* 事務局より資料4の説明。
3.閉会