■コメンテーター 工藤 学 総務省自治行政局行政課 行政第三係長 横道 清孝 政策研究大学院大学 教授 白木 俊郎 シンコースポーツ㈱常務取締役 薬師寺 智之 アクティオ株式会社指定管理事業部東日本営業課 課長 ■コーディネーター 鎌形 太郎 株式会社三菱総合研究所地域経営研究本部長
■ 質問1 事業の公募、非公募の判断はどう行うべきか 指定管理者制度導入時の総務省通知では、公募するべきとされているが、実際には公募にかけないものも非常に多い現状がある。 今後はどういう判断基準で公募・非公募を決めるべきか。
○工藤 公募・非公募の判断基準は、指定管理者の選定手続では複数の申請者に計画書を提出させるなど、適時必要な情報開示を行うことを平成19年1月の総務省通知により要請している。 指定管理者制度は行政サービスの質の向上という観点と、民間の経営ノウハウ、2つの大きな柱が制度設計の基本的な考え方である。また、公の施設の性格から指定管理者制度の指定にあたっては、公正性・透明性の確保が求められる観点から公募が望ましい。 しかし公の施設といっても、目的や性質、地域の実情により、総務省としても公募によらないケースは当然あり得ると考えている。判断基準としては、透明性や公正性の確保という観点から原則公募が必要ということを前提としたうえで、総合的に、例えば施設の目的・性質に応じてより適当な選定手続を行う必要がある。
○横道 公の施設は必ずしも指定管理者にする必要はないわけで、直営か否かの判断があると思うが、他の団体に任せる場合には、公募しない特段の理由があるかどうかの説明責任を果たす必要がある。最初の指定時は時間的な余裕が無かったが、2回目以降は情報、経験、他事例等も参考になるので、公募がもっと増えるであろうし、増えるべきと考える。 ただし、集会所やコミュニティ施設を地元の自治組織や小さなNPOに任せたい場合には、住民自治を育てたいという政策の一環として位置づけて指定すればいいのではと考える。
○白木 1巡目の中では非公募も随分あった。やはり施設の特性上、応募者無しという施設もあるし、集客性のほとんど無いイベントも行いにくい施設で民間事業者が手を挙げることは難しい。もしイベント等で役に立てるとしたら、公社、財団との協働ぐらいで、企業だけではちょっと厳しい。特に利用料金制では難しい。民間としては公募が増えてほしい。
○薬師寺 非公募にせざるを得ない事情もあるという自治体の話も聞く。よって、非公募・公募がいいという議論より、公募できるものはするという動きが一番大事かと思う。特に、1期目は時間経過の中でなかなかできなかったと聞くので、2期目・3期目と精度が高まっていけばいい。
○鎌形 公募を前提に検討してほしいが、非公募にせざるを得ない場合はきちんと説明責任が果たせる基準を作成するべきである。次回の公募の準備をしないといけない時期だと思うので、既存の外郭団体をどうするかも含めてしっかり検討してほしい。
■ 質問2 地元企業に限定した公募に対する見解について 地元企業に限定した公募を実施する方法については、経済性と地域振興のバランスの観点からどのような見解か。1巡目の公募要件では事例が結構あったが、どう思うか。
○工藤 地元企業に限定した公募に対する考え方については、調達関係の契約と指定管理者制度とは制度上別であると整理されているが、基本的にはどちらも公正性・透明性が当然求められる。このほか競争性、例えば効率的な施設の管理という観点からの経費の節減、サービスの質の観点という視点が必要である。 こうした考え方を前提として、あまりに極端な、地域要件的な本店・支店の所在地をかなり狭い区域に限定した募集は、対住民との関係、説明責任の観点からも難しいのではないか。 ただ一方で、地方公共団体独自の政策も当然考慮されるべき事項なので、バランスを配慮し具体的に競争性を担保したうえでの地域企業に限定した公募というのは、方法としてはあると考える。
○薬師寺 制度の趣旨としてはサービスの向上と経費の縮減があり、地元の雇用や、地元企業にお金を落とすとか、税制収入という話は本来無かったはずである。 コミュニティ施設の場合、地元施設だから地元で管理するという考え方もある一方で、よそによる違う管理もできるという考え方もある。公募イコールよそが選ばれるではない。
○白木 コスト面から考えると雇用は地元の人材を採用する。転勤は当然あるが、1巡目、2巡目と続いた場合は必ず地元の人材を採用・育成して、地元中心で運営するのが一番地域に密着できる。当社では税制面で本社、支店があることが条件である場合は無理しては参加しない。最近は選定後に営業所を設置するケースが多い。
○横道 この問題は都市部より地方圏での問題と考える。雇用の確保が問題ということであれば、できるだけ地元の人材をスタッフとして雇うということで済むはずである。それ以上に地元企業を何とかしたいと考えるかどうかである。指定されてから営業所をつくる場合であれば、機会は広く設けておいたほうがいいのではないか。 ただし、雇用も全部外から連れてくる、事務所も設けないでは話が違ってくる。どのぐらい現地化するかを求めたうえ、地元企業との優劣を判断することになるのではないか。
○鎌形 当初は地元企業優先としていたがうまくいかず、ガイドラインを変更して今後は地元企業限定の公募条件を外そうとしている自治体がある一方で、当初はオープンにしたが、地元の反対を受けて逆に地元枠をつくった自治体もある。地元限定の公募としなくとも公募選定時に地元を十分重視した提案であるか、地元の人材の雇用があるか等の評価項目を設けて評価すればいいのではないか。
■ 質問3 前回公募により採択した団体を次回に特命で指定することは可能か
前回は公募により外郭団体を採択したが、諸事情で次回の選定では公募ではなくて、その団体を特命で指定したいが可能か。 また、外郭団体に限らず、良いサービスをした民間企業のケースについても可能か。
○工藤 結論からすれば可能と思われる。より高いサービスを提供し、かつコストの縮減を実現する業者が、指定期間後の評価で最適という積極的な理由があれば、住民への説明責任を果たせるという理由から可能と思われる。 各地方公共団体の条例では、首長が必要と認める場合は公募によらないことができるといった規定があると思うので、実際に特命で次回指定する場合はそれに基づき、議会説明や準備説明が行われれば制度上問題ないのではないか。
○白木 外郭団体を問わず民間団体も特命はありがたいが、原則として公募の洗礼を受けたほうがより良い品質の競争原理が働くのではないか。外郭団体について、いい事例もたくさんあるが、中には外郭団体のみというところが当然のように特命で指定される場合がある。
○薬師寺 次回に特命指定されることはありがたいと思う一方、制度の趣旨から公募が望ましいとも思う。 5年ないし3年という指定期間を繰り返せば、どこで見直しするか、どういう評価をするかという問題もあるので、公募にするべきである。 既存団体は少なくとも施設を知っている点で有利なので、公募でいいと思う。
○鎌形 良いサービスを提供していれば次回は特命指定されていいと考える民間企業はたくさんあると考える。ただし逆に公募で採択された外郭団体が、次回以降ずっと特命になる心配もあるかと思う。
○横道 特命指定をしても違法にはならないが、公募しないとおかしい。それなりに運営していたら引き続き指定される、という安易な運用が繰り返されると、既存の外郭団体を指定していたのとあまり変わらないのではないか。 だから、通常の運営をしているだけであれば、指定期間終了後はまた公募としなければならない。ただし、素晴らしい業績を上げたとか、いろいろ調べてやはりこの団体が一番良いということとかで説明がつく場合もあるかもしれない。 しかし、再び公募して、審査する中で今までの業績をどう評価するかが基本的な考え方にならないと、制度の趣旨からおかしい。指定管理者制度の導入趣旨は競争による質の良いサービスの提供であり、最初だけ競争させて、あとは引き続き指定というのはおかしい。
○工藤 先程話したのは、制度上可能かについてだけで、例えば特命的な指定を推奨するという意味ではない。説明責任さえ果たせれば制度上可能だが、その説明責任を果たせるかは、恐らく、最も質の高いサービスを提供するというお墨つきを与えられるかということである。
○鎌形 公募しなくても可能だが、運用上は公募をするべきである。 次回に特命するのであれば、高評価を受ける、優れたサービスを行っている、といった基準を最初の公募時に明示しておかないといけない。 サービスが良ければ契約期間後に引き続き運営サービスを管理させることについてPFI等では事例があるので、指定管理者でもやりようはある。
■ 質問4 修繕費の取り扱いについて官民の負担をどの規模で線引きするべきか
軽微なものは指定管理者が、比較的高額なものは行政側が負担しているが、どのような規模で線引きをするのか参考事例を知りたい。
○白木 スポーツ施設の事例では、過去は1案件 100万円以上が行政、それ以下が指定管理者という案件が比較的多く、中には30万・50万円で線引きするものもあった。最近では1案件あたりいくらではなく合計、例えば合計で50万円を超えた場合は行政が負担するという考え方のほうが多い。 募集要項・事前の基準書で明記されている範囲でもめないようにしているので、その他不可抗力云々でもし大規模な修繕費が発生した場合は両者対等協議としている。特に、応募段階で修繕履歴等をかなり慎重に見て応募している。 当初は明記がなく後出しで事業者負担とされ、10万円のものは事業者となったらその10万円の負担が50件もあったことが判明したこともあった。今後はしっかり協議していきたいと思っている。
○薬師寺 導入当初は自治体によって金額の線引きがそれぞれ違ったが、1件あたりいくらが指定管理者で、それ以上であれば自治体でという線引きが非常に多くなっている。 最近事業者側として非常にやりやすい事例がある。それは、提案段階で修繕予算について一定金額以上の修繕は自治体が出し、年間予算はこれだけ確保していることを明記しているケースである。この場合、自治体側と指定管理者側で年間の修繕計画が非常に明快に作成でき、この予算をこの時期に執行する、余ったらここを能動的に修繕する、といったことができる。一件あたりで幾ら以上は自治体が負担という考え方でもいいが、それが何件までできるかが明確になると非常にありがたい。 また、長期の修繕計画が欲しい。過去の修繕履歴が残っていない場合が多く、応募時にリスクが非常に見えづらい。運営開始後に壊れている場所が見つかり、運営の足を引っ張ることもある。 修繕履歴や中・長期の修繕計画を見極めながら、施設の維持管理計画、予算を確保してほしい。
■ 質問5 物価変動や不可抗力が発生した場合の指定管理料の補填は可能か
原油高による燃料費の増加、災害による管理費の増加、稼働率の大幅な上昇による費用の増加など、物価変動や不可抗力が発生した場合に指定管理料を補填することが可能か。 また、支払い方法は、既存の指定管理料の増加とするか、別途指定管理料とするのか。
○薬師寺 可能であり、必要なものは経費として認めてほしいというのが事業者の願いである。特に昨今では原油高や大規模災害などが発生した場合はもちろん、指定管理料のみを収入とする施設では、稼働率が上がると水光熱費など間接的な経費が上がってしまい、頑張れば頑張るほど経費が出ていってしまうため非常につらい。 当社では、指定管理料の変更契約ということで補填対応となったケースがある。
○白木 寒冷地で、原油の高騰について補填対応となったケースがあった。稼働率が上がりすぎて水光熱費が増えた場合は、企業努力が金額に評価されない部分を考慮してもらい、当年度は予算がないため翌年度の予算で付加してもらったケースがある。
○工藤 翌年度対応については、制度上何ら問題がないかと思われる。通常であれば協定書等での協議事項とする、個別具体的な項目として明記するという方法があるかと思うが、ここは両者合意の上で決定するというところまでは言えると思う。指定管理者制度では民間事業者がもうけ過ぎといったお金の話だけがクローズアップされがちだが、やはり、その対価として当然に間接経費がかかることは、共通の認識として持たなければいけないのではないか。
○横道 想定外のケースについてはその経験を踏まえて協定書等で示せる部分は盛り込んでおき、それでも想定外のことがまた出てくる可能性もあるので、その場合には改めて協議するなど何らかの項目もその中に入れておく必要がある。
○鎌形 基本的には、協定書を結ぶ際に分かるものについてはなるべく事前に明記しておくということが重要である。その際、大幅な物価変動や不可抗力などは事業者が担えないものであり、それらは基本的に行政側が担うべきである。そういう原則で最初に明記できるものは明記し、そうではないものは協議の中で決めることがいいのではないか。
■ 質問6 効果的な事業の引継ぎ方法は 指定管理者の選定替えのときにサービス水準を低下させることなく、業務の引継を行わせるにはどのような方法が効果的か。
○白木 3月31日まで施設に立ち入れず、4月1日から業務を開始しなさいというケースがあるが、このような場合、基本的には対応は不可能。指定管理者の場合は、1ヵ月以上の猶予期間があって業務を継続する上で十分な準備期間を用意していただきたい。 もう1つ、事業者が変わっても、引き続き雇用を希望している方と面接し採用する場合があり、民間事業者としては期間がある程度必要と考えている。 指定管理者が変わる場合、協定の中に引継事項があり、よくできている協定書では、猶予期間を1~2ヵ月置くなど、次の事業者に責任をもって業務に支障のない形で引き継ぐことが明記されている協定もある。
○薬師寺 今まで引継で苦労した経験として、事務所の中に3月31日の夜9時まで入れず、4月1日以降、一定のサービスが低下したためお叱りをいただくこともあった。自治体には監督責任もあるので、ぜひ円滑な引継のための橋渡しをお願いしたい。 採用の問題では、当社は社内異動が前提になるので、必ずしも人を引き継ぐことありきではない。 引継を非常に心配している自治体もあるが、業務の引継とノウハウの引継は違うと思われる。会社によってそれぞれノウハウがあり、出せない部分もあるかもしれない。業務の引継は指定管理者が責任を持ってやらなければいけないが、自治体には新旧の管理者がお互いに円滑な引継ができるような体制、人間関係の構築を橋渡ししていただければありがたい。引継が上手くいかないと一番困るのは市民なので、しっかり行うべきである。
○工藤 民間事業者では独自のカラーがあり、それが売りで指定管理者として選定されるためノウハウは固有のものであると考える一方、公の施設として一定の行政サービスを確保するため、できるだけ自治体側にノウハウを残してほしいという思いもある。それを具体的に引継が決まった段階で出せというのは難しい。地方自治法上も毎年、事業報告書等の提出を義務づけていて、何を盛り込むかというのは、基本的には各自治体が施設の性質に応じて自由に決められるので、結局、事例の蓄積にならざるを得ない部分がある。一方で、指定管理者からノウハウを知ることも必要かと思った。
○薬師寺 ノウハウも、いわゆるサービス的なノウハウとマネジメントのノウハウがあり、自治体の立場としてサービスを低下させてはいけないということは重要である。民間の立場からすると、指定管理者が以前の団体から変わったときに、今までのサービスを最低限維持することが前提である。それをできるからこそ応募するということもひとつの前提なので、逆に応募側がきちんとそういう観点をもって応募すれば、新しく変わっても問題ないかと思う。先程申し上げたノウハウとは社内のマネジメントのノウハウを言ったつもりで、サービス的なノウハウを何も引き継がないということではない。
○横道 引継はコストの1つであり、同じ団体が管理していれば全くコストがかからないが、団体が変わる場合には手間と時間をかけてスムーズな引継を行う必要がある。
○鎌形 第1巡目の引継は外郭団体から民間事業者へというケースがほとんどであったと思うが、今後民間事業者から民間事業者への引継となったときのために、協定書にきちんと引継事項を明記することが必要である。また、自治体側も立ち会って責任をもつことが重要である。 自治体はきちんとした引継が行われるように立会等をお願いしたいし、協定書に引継の項目をきちんと明記するようにぜひお願いしたい。
■ 質問7 利益が出た場合の取り扱いについて
委託料を支払わない利用料金制を採用して大幅な利益が生じた際、一定額または一定率について自治体へ納付することは可能か。また、募集要項や仕様書の中にどのように表現したらいいか。
○薬師寺 基本的には可能だがあらかじめ示されることが大事である。募集要項で、これだけの収入を見込んでそれ以上に収入があった場合に何%が自治体、何%が民間事業者かをきちんと明記していれば特に問題ない。ただ、本社の支援が多かったからこそ利益が上がった場合もあり、一事業の案件で考える場合と全体で考える場合があり、利益の考え方は難しい。
○白木 可能であるといえる。最初の提案書に基づき事業収支計画を立てるとき、予定以上に収益が上がっても経費を払った後にお金が残った場合、残った部分で修繕してくださいというところもあれば、サービス提供に使ってくださいというところもある。当社の場合は、半分を企業努力として受け取ることでインセンティブが働いている。ただし、収支問わず全部指定管理者にいくという場合もある。予定より増加した分は全部自治体がもらう、という事業に応募するのは難しい。
○工藤 法律上具体的には書かれていないが可能である。利益が出た場合の取扱については、地方公共団体の厳しい財政状況ゆえに収益が生じた場合はできる限りもっていきたい、という考えがあるが、経営努力の結果としての利益を正当に評価しなければ、指定管理者としてはインセンティブが働かない。 募集要項等で提示することが双方のためである。
○横道 自治体では収支が均衡することが当たり前で、利益が出るのはいけないことというイメージがあるが、民間に任せた以上はある程度の利益を出そうとすることを前提とする必要がある。 しかし、利益を民間が全部もらうかは、予め決めるべきことである。また、大幅な利益が出るということは、最初の想定が間違っていた、本当は大幅な利益を生む施設なのに活用していなかったということなので、次回からは利益の折半等のルールをつくるとしても、今回は、民間事業者から自主的に申し出てこない以上、後出しで自治体のほうが利益を取ってしまうというのはいかがかと考える。
○鎌形 収益性がある公の施設としては、観光・レクリエーション型施設や、大規模な商業的イベントを行うスポーツ施設などが想定されるが、収益が出た場合に後からの取り決めで全額自治体が取ってしまってはいけない。取扱は募集要項や仕様書できちんと明記するべきである。
■ 質問8 利益が出た場合に次期の指定管理料を減額する必要はないか 民間事業者が物販などで多額の利益を上げた場合、次期の指定管理料を下げる必要はないか。また、そのような事例があれば、あわせて教えてほしい。
○薬師寺 自治体としては非常にいいことであり、可能と思われる。物販で多くの利益を上げる場合やコスト削減努力で水光熱費を縮減した事例などがある。 水漏れをきちんと修繕しただけで水道料金が3分の1ぐらい下がった事例もあり、きちんと見直しができれば十分減額できる余地がある。必要かどうかは別として、こうした提案を求めるやり方はある。
○白木 スポーツ施設の場合は若干異なり、安全性を考えたときに3年ごとに指定管理料がどんどん下がると無人化していくので限界がある。やはり、物を売るような特殊な例での増減はあっても、最低限の人員配置とか、最低限の安全のための限界があるので、その点だけは見極めてほしい。
○横道 指定管理料を引き下げて利益ゼロにするという話になると民間事業者はやっていられない。いろいろな経験の中で模索していくしかないが、どのくらいの利益なら下げなくていい、あるいは、ここまで利益が上がったら指定管理料も下げたらいい、という話になるのではないかと考える。
○鎌形 今回利益が出たということであれば、当然次回の指定管理料は下げられるが、その方法として自治体側で上限を決めて公募するのはよくない。そうすると、今回はたまたま特殊な要因で利益が出たのであり、他業者だとその金額では運営できないということになるかもしれない。 実際には実態のデータ等を提示して公募を行えば、競争原理が働き自然と指定管理料は下がる提案がされるのではないかと思う。利益が出た要因等を良く分析した上で、次回の公募条件を詰める必要がある。
■ 質問9 不当な人件費の削減がみられる場合の対処は
管理コストの削減は指定管理者制度の目的のひとつだが、指定管理者による行き過ぎた人件費の削減がみられる場合にどのように対処すべきか、具体的な取組事例はあるか。
○鎌形 まずはモニタリング等をしっかりして、実態をきちんと把握することが必要である。 それから、問題がある場合は、事業者に対しての指導、最悪の場合、改善勧告ということまでしていかないといけないと思う。
○白木 余りにも削減するというのは、会社の目的が利益の追求とはいえ社会貢献は全くないし、企業の繁栄には繋がらないので、企業として行うべきではない。 自治体側がイエローカードとして改善勧告、レッドカードとして指定取消ぐらいの基準で評価してほしい。スポーツ施設ではあり得ないが、指導員の無人化、誰も配置しないということをすると、大変な事故に繋がる。 やはり、提案どおりの人員配置と適正なコスト競争で勝ち抜かなければ、安かろう悪かろうという従来の入札型に戻ってしまう。
○薬師寺 やはり、提案の段階できちんとその部分の精査ができているかが問題かと思う。 特に何時から何時まで何人配置して、適正な休憩時間が与えられているかとか、きちんと週40時間という労働時間が守られているか、そういう部分をきちんとチェックした上で値段が安ければ採用するべきであるが、一方で、人件費などを個人の頑張りの中だけで削減することは長続きしない。人が潰れるだけになるので、自治体としても経費の縮減という大きな目標もあるかと思うが、下げ過ぎるとか、どこを下げているかという点のチェックは非常に重要になるかと思う。
○工藤 全体を通して言えるが、不当な人件費の削減等で、例えば事故等が起こったときに誰が最終的に責任を負うかという観点からすれば、例えば、人件費を削り過ぎて低価格で受けざるを得ず、人員配置が不足した結果、死亡事故が発生したという場合に、最終的には協定なりの取り決めでリスク分担に応じて応分の負担をするというのが原則だが、仮に指定管理者に賠償能力がなかった場合については、公の施設なので最終的には各地方公共団体が責任を負うしかない。一時的なコストの縮減だけに気を取られたためにトータルコストが割高になって、逆効果になることも考えられる。 現に去年、指定管理者のプール事故があって、指定管理者が「この管理料ではこれしかできなかった」とコメントしていた。こうした場合には最終的には自治体が説明責任を負うことになるので、目先のコスト縮減だけではなくて、民間事業者がちゃんとした体制を構築できるようなコストの積算というのは考えていかなければいけない。
○横道 コストの削減も1つの目的であるし、従来の外郭団体とかの運営が人件費を中心として高コストであったかもしれない。民間企業にやらせてコスト削減が図られるケースは出てくる。ただ、とにかく安ければいいという話になると、余りに安過ぎてサービスの低下とか、事故をもたらすことになるので、どのぐらいコストがかかるのかを見極めることが重要である。 例えば議会からの質問があったとしても、自治体として適正なコスト、民間企業の情報、あるいは話も聞きながら、どのぐらいのコストであれば適正に運営できるかを見極め、余りに安いところについては多分そこまでできないだろうから、高くてもこちらのほうを指定しますよという説明をちゃんとできるようにしなければならない。
○鎌形 必ずしも民間事業者が悪いのではなくて、自治体側も十分考えて制度を運用することが必要で、3点重要なことがある。 1つは、最初の公募条件、提案の評価である。公募と選定をする際に、最初から非常に低いコストで公募してしまうとか、提案に対しての評価がコストを重視してしまうということだと、十分なサービスが提供されず、問題が起きてしまう。 2つめは、悪いサービスが行われていないかをチェックする機能として、モニタリングをしっかり行うことである。 3点目は、問題が起きたときにどう対応するか協定の中で明記することである。「こういうことがあったら改善勧告をする」とか「指定を取り消す」といった条件を盛り込んでいないと対応できないことになる。 |