平成20年6月16日開催 第1回指定管理者セミナー
■コーディネーター 株式会社三菱総合研究所地域経営研究本部長 鎌形 太郎 氏 ■コメンテーター 総務省自治行政局行政課行政第四係長 萩原 良智 氏 横浜市共創推進事業本部共創推進課担当係長 杉山 昇太 氏 川崎市総務局行財政改革室主査 加賀谷 誠 氏 神戸市行財政局行政経営課長 加藤 久雄 氏 アクティオ株式会社指定管理事業部東日本営業課長 薬師寺 智之 氏
■ 質問1 非公募の考え方 指定管理者制度の運用上、現状では公募としない案件は多いが、どういう判断基準で公募・非公募を整理すべきか。 ○総務省 指定管理者の選定に際しては、原則、複数の事業者より事業計画書を提出させることが望ましい旨を総務省通知で示している。 しかし、地域の実情や目的、性質によって公募としないケースは当然あり得ると考えており、判断基準としては透明性や公正性の確保という観点から、原則公募を前提としたうえで、設置者たる地方公共団体が非公募等の適切な政策的判断を行うのは問題ないと考えている。
○横浜市 横浜市では原則公募の方針である。しかし、地域密着型の小型コミュニティー施設は、地域の団体による管理が望ましいという考えで非公募にしており、保育園に関しても現在は指定管理でなく民営化しているが、当初の2園についてのみ指定管理者制度導入の際は非公募とした。 また専門施設では非常に多くの議論が出る。特に福祉施設の専門施設や、入所者のいる施設に関しては管理団体が変わることに対する懸念があり非公募の要請もあるため、執行会議という幹部会議に諮って公募・非公募の判断をしており、今回、児童福祉施設など、一部の施設が非公募とされた。 ただ、原則は守っていこうという姿勢で進めている。
○神戸市 神戸市では原則公募で行っているが、いくつか例外があり、前回の指定の際には地域福祉センターなどのコミュニティー施設を非公募とした。これらは公の施設の目的そのものが地域の方の利用に供することなので、引き続き非公募が適当と考えている。 ただ、専門性の要件から非公募としている施設、特に障害者関連の施設などについては、現在非公募としているが、今後公募にするかどうかが次の課題である。障害者自立支援法などにより障害者施設も市場的な目が必要と考えているが、その一方で受け手のいない施設もあるので、施設の実情に合わせた対応が必要と考えている。
○川崎市 1巡目については、法改正のはざまにあった多摩病院以外はすべて公募で行っている。非公募については、住民・施設利用者に説明責任が果たせれば可能だと考えているが、川崎市では原則公募という考え方は変わらない。
■ 質問2 外郭団体の取扱い 指定管理者制度導入に伴い、従来から公の施設の管理運営を行ってきた外郭団体を引き続き指定するのかどうか、指定しない際には外郭団体の存続等をどのように考えるか。
○総務省 制度上は継続して指定することが可能であり、より高いサービスの提供とコスト縮減の実現について住民に説明責任を果たせるのかどうかによる。 また公募が望ましくない業務について特名で指定することとしている地方公共団体もあると伺っているが、総務省としては各自治体で公の施設の管理のあり方を検証する際に、その外郭団体の設置目的も前提としてあるので、検討段階、検証段階の議論の俎上に存続等に関してものっているのであろうと考えている。それぞれの地方公共団体で適切に判断されるべきことと考えている。
○横浜市 横浜市では外郭団体の改革を進めており、指定管理者については一般の事業者と同じ扱いで応募を受け付け、アドバンテージがあれば選定され、そうでない場合は、外郭団体の存在意義を含めて所管部署と調整しながら進めていくことになる。
○神戸市 神戸市では、役割がなくなった段階で外郭団体を廃止していく方針であり、かつては、外郭団体は64団体あったが、現在は46団体まで縮小している。その上でまだ一定の存在意義がある団体については、団体の判断により指定管理者に応募しているが、外郭団体優遇にならないように選定段階から情報管理の徹底などに配慮している。 また、外郭団体が指定管理に応募しない事例もあるほか、応募しても選定されない場合には、市からの派遣者については戻し、あるいは採用を凍結するといった形で内部の経営努力をされているのが実情である。なお、外郭団体の整理方法として統合することが多い。
○川崎市 川崎市では、平成14年から出資法人について人的・財政的関与を減らしていくという取組みを進めており、指定管理者制度を導入した際には、まず法人そのものの存続意義、業務の形態等を見据えた上で、それぞれの法人が自己責任において応募するかどうか判断されており、応募せず執行体制を変えてスリム化する団体もある。 また、今年度廃止した団体のプロパー職員の一部の方について、再就職を拒みそのまま退職したという事例がある。
○コーディネータ 小規模の市町村では施設運営だけの目的で設立したような外郭団体もあり、市町村が公募する前に廃止の方針を出し、プロパー職員については、転職のあっせんをするなど対処しているところもある。まだ方針を確立していない自治体が多いと聞いている。いずれにしてもきちんとした対応が必要である。
■ 質問3 指定期間の考え方 指定期間についてはどのように設定しているか。また望ましい期間はどの程度か。
○総務省 制度趣旨の一つとして、適切に管理が行われているかを定期的に見直すことを可能とするために指定期間を設けている。 平成18年12月に行った調査によると、期間を3年に設定している団体が一番多くあったが、なかには1年として様子見している団体もあった。1年目にモニタリングし、2年目に改善等必要な指示を出し、3年目、改善されたときには、既に次の選定段階に入っていることから、3年は短いという意見があった。 ただ、植栽や公園などでは一定期間たたないと評価がみえにくいこともあり、その団体が資本投下をどの程度許容しているかによって、資本投下の回収期間も考慮する必要もあることなど総合的に考慮して、指定期間を定めるのがよいと考えている。
○横浜市 横浜市は、当初の指針では指定期間を3年から5年として導入しているが、基本的には、施設の将来計画を踏まえての所管部署ごとの判断と考えている。当然、人材育成という観点で5年以上にするという考え方は妥当なので、政策上の施設の今後のあり方も含めながら期間を決めていくものだと考えている。
○神戸市 神戸市は運営指針で原則4年と定めているが、19年度監査時に、4年では人材育成やノウハウが蓄積されないこと、民間事業者にとって雇用面で不安があること、投資が回収できない可能性があることへの懸念が意見としてあった。 そのため、各所管部署で期間を変えたほうが良いと認められるような場合は行政経営課と協議をしてもらい、その結果期間を延ばす必要があれば、運営指針を変える形で対応することを、現在検討中である。
○川崎市 保育園に指定管理者制度を導入した際に、保護者の方から6年にすべきと意見があった。それぞれ施設の事情に応じて決めていくしかなく、その際には説明責任がきちんと果たせればよいと考えている。
○アクティオ 当社では3年か5年というのが非常に多い。最近の公募では3年から5年に変更されたものもあり、少し長くなった印象がある。 できれば5年ぐらいが一番いいのではないかと考えている。3年間ではスタートしてノウハウを蓄積して、展開しようと思ったときに、既に再公募が来る。2年間の成果をもって3年目に公募を受けるので、3年目の公募を受けるときに実質2年間のノウハウしかない。しかし長過ぎてもまた問題がある。
○コーディネータ 主催している研究会において、民間事業者にとって10年などの長期間になると、その間の事業の環境変化のリスクも大きいので困るという話も聞く。さすがに3年だとノウハウの蓄積ができず、すぐ次の公募の準備をしなければならない。また、施設の機器を新たにリースして整備することもあり、リース期間は4年とか5年のケースが多いため、3年というのは短いという話をよく聞いている。事業の種類にもよるが一般的には5年ぐらいが適当である。
■ 質問4 再指定における事業実績の加点方法 モニタリングにおける評価結果を指定管理者の2巡目の選定時にどのように反映したらよいか。また、現指定管理者の実績を次期の選定基準に加えることの是非について。
○横浜市 第三者評価のモニタリングを行っているが、次の選定にまで加点できるような内容にはなっていないので選定には反映していない。 ただ、次回の募集では、よい管理をすれば次にまたやれるというインセンティブを与えるためにも、利用者満足度を測定するような評価制度を入れることができれば、実績として反映できる仕組みもつくれると考えている。
○神戸市 従来から、選定基準の中で、能力評価として、同種同規模等の施設の実績をみる項目があるのでそこで拾えると考えている。前回の実績について特別に加点すると外郭団体を優遇することとなる懸念があるため、全市統一の基準として入れることは考えていない。
○川崎市 2巡目ということであるならば、指定管理者は1巡目の運営の中で施設をよく知っており、提案内容に反映できるというメリットはある。応募時に加点する旨を明示した施設を除き、特別に加点することは今のところ考えていない。
○アクティオ その評価をどのように活用するか整理した上で、公募の段階から加点することを示されていれば民間事業者にとって非常にやる気につながる。
○コーディネータ 北九州市では既にこれを制度として取り入れていて、モニタリングの評価をきちっとやり、その点で基準点以上の場合については、次の公募のときの審査の中に加点項目として入れられている。
■ 質問5 地方における指定管理者制度のあり方 公の施設が商業ベースに乗りにくい農村部では、民間事業者の応募がないため直営もしくは第三セクターによる管理とせざるを得ない状況があるが、どのように指定管理者制度を運用すべきか。 ○アクティオ 当社が応募する際は、本・支店、営業所の所在地があり、支援体制がとれるかを判断材料としている。営業所等が近くにない農村部で行う場合は、一定の運営予算がないと本社の支援経費の捻出が難しく、そうなると管理の目も行き届かない部分があるので、その点が確保されているかが応募の判断になる。
○神戸市 神戸市の場合、六甲山という山の裏側がほとんど農村部であり、その地域について指定管理に出すと応募が少なく、近隣の事業者や地元のNPOに声をかけることがある。 その場合は結果として公募しても競争にならないが、それがよいかどうかはその施設ごとで考えざるを得ない。
○コーディネータ 民間事業者の意見として聞いているのは、地理的な問題というのは多少あると思うが、それ以上に対象施設の性格上、ある一定の規模のビジネスになるかということも含めてその施設自体が民間企業のノウハウが生かせるかどうか。単純に運動場が1つあってグラウンドを1個管理するようなケースは、東京の事業者はあまり興味は湧かない。 また、東京の事業者に対してきちんとPRすることも必要である。 それから、事業の条件。魅力ある施設であっても、やることがきっちり決められていて、民間企業のノウハウを生かす余地がなければ応募はない。 これらにしっかり取り組めば多少応募も増えてくると考えている。 また、1巡目は、地元の業者であることを応募の条件としていたものが結構あったので、そのあたりも再考すれば改善されるはずである。
■ 質問6 指定管理者撤退の防止策 指定管理者となった事業者が経営難のため運営から撤退し、地方公共団体等が直営で対処する事態が起こっている。その防止策はあるか。 ○横浜市 横浜市では撤退事例はないが、いつあってもおかしくないと考えている。 防止策としてまずは、公募の際に、リスクをあらかじめ明らかにしておく責任が施設設置者としてあると考えており、すべての公の施設に関して、これからのアセットマネジメント、修繕計画等を全部診断して出していこうということを市としてやっている。 また、小規模修繕に関しては、市で幾つかの施設をエリアでまとめてやっていくとか、定期的な施設の点検のマニュアルを強化するとか、ということについて施設のハードの部門と、これから調整してつくることを考えている。 協定にリスク分担を明確化しておくことで、事業者の不安定要素や過度の負担をとり除くことが必要である。今後の施設の活用や運営の方向性も示すことで応募する事業者にも公共の一角を担う自覚を促したいと考えており、また、継続する責任の重要さを理解している事業者を選定できる仕組みがないものか考えている。 また、利用料収入や利用者の増加という経営努力を事業者側のメリットとして戻せるトリプルウィンの関係のような、公共施設の積極経営的な指針ができないか考えている。
○川崎市 積算内容の精査と的確なモニタリングしかないと考えている。
○神戸市 撤退事例としてはホテルと休養村があるが、ホテルについては、8月末まで営業することを事業者と協議した上で、4月に公募して新しい事業者を決め、その後を引継期間として9月から新事業者に移すこととしている。 休養村については、応募する事業者がないようなところなので大変苦労したが、近くの村おこしに取組んでいるNPOに公募の手続を取った上でお願いした。
○コーディネータ 破綻事例は既にかなり出ており、公募条件に無理があることによる赤字での撤退が多い。例えば公でつくってしまったレクリエーション施設で、公が運営して赤字になっているものを民間事業者によって改善、あるいは独立採算を目指して公募したところは民間がやっても難しかった。それ以外にも、親会社の倒産によるものなど様々なケースがある。
○総務省 指定の際に、収支見込みがかなり厳しい前提のもの、指定管理者の指定を受けるために、きちんと精査されていないような計画書が出てくるケースもあると伺っている。指定管理者制度は丸投げの制度ではないので、地方公共団体がきちんと計画書を精査することが重要と考えている。また、規模に比して効率化を図り過ぎている計画書については、その水準で住民サービスの維持が可能かどうかを見極められるかが大切である。
■ 質問7 指定管理者制度の導入効果 指定管理者制度の初回導入時、1巡目は直営との比較のため大きな効果がでるが、2巡目以降では1巡目ほど大きな効果は見込めない中で、2巡目以降の効果についてどのようにとらえたらよいか。 ○横浜市 コスト的な効果については1巡目でほとんど出てしまっている。2巡目については指定管理者制度も3年経過したことから、マーケットをよく認識されて参入しようと計画する事業者が増えるだろう。一方で自治体側もきちっとマーケットを運営できるところまで成長すればよりよい運用につながると考えている。 2巡目はプラスアルファの価値をどれだけ生み出せるかというような視点で効果をみていくのがよいのではないか。行政側もそういう視点で民間に負けないように勉強してプラスを生み出していくことが2巡目の課題と考えている。
○神戸市 2巡目ではコストの面ではあまり期待できない。 指定管理者の公募に関する評価基準等の情報公開を徹底しているため、新規参入が期待でき、また新しいサービスが提供されることを期待している。 もう1つは、公募要件の中に一定の投資提案というのを条件づけすることで新しい選定ができないかを模索している。
○川崎市 1巡目の結果や社会経済環境等を踏まえて、その施設に行政が関与する必要があるか、民営化したほうがいいのかという公共サービスの提供主体の検証という点でのコスト比較の検討を行うことはあるが、比較は、定性効果を考えている。
○アクティオ 2巡目については、実は、コストが上がったものもあれば、さらにコスト縮減ができたというものもあると思うので、どのように提案していくか考えている。地方公共団体側からは財政当局との調整で何%か縮減の要求があるという話をよく聞くが、コストに占める人件費の割合が高く、現状のサービス水準を維持、向上していくためにはスタッフの経験、能力を踏まえた定期昇給などの措置が必要なため、一定の適正な人件費を見込む必要性について考慮いただきたい。 そういう意味では、行政サービスの基準を明確に示してもらえればありがたい。
■ 質問8 燃料費の高騰に対する対応 最近の燃料費の高騰による高熱水費の上昇に対してどのように対処したらよいか。 ○横浜市 指定管理に限らず施設運営には光熱水費が必ずかかるので、財政当局と調整中であるが、公の施設の管理にかかる固定的コストと価格変動はできれば措置していきたい。 国交省から建築資材の高騰に対応する通達も出ていたが、同様に、あらかじめ何%まではどちらが見るなどのルールづくりをすることが必要と考えている。
○神戸市 毎年度、協定書を結ぶこととしており、その中でリスク分担表を入れている。リスク分担表の中で、物価変動については受託者負担という規定にしており、変動が著しくない場合は原則、事業者の負担としている。 ただ、事業者の責めに帰すようなことがない場合で事業継続が困難な場合は協議することとしているので、著しい高騰の場合はそれに該当する。今のところ、具体的に相談されるケースはまだ聞いていない。
○川崎市 仕様書、募集要項、協定書のレベルが施設によって違うので、この燃料費の問題についても、協定書できちんと対応できるような形でリスク回避を行っているのが殆どである。
○アクティオ 今のところ、予算の枠内、もしくは総額の枠内でやりくりできているが、地方公共団体の方から燃料費の値上がりによる影響について照会をもらっている。 今後はどうしても上がってしまった分のみ相談することで対応したい。
○コーディネータ 基本的には協定書の中に組込むことが重要であり、PFIの契約では非常に長期間ということもあり、物価変動リスクを盛り込んだ契約になっている。今後、指定期間を延ばす場合や、大きな施設で燃料費が非常にかかるものについては特に留意が必要である。 |